「あ、んま、焦らす、な」
「嫌いか?」

焦らすなら自分で擦っちまう、と声を震わせながら腰を押し付けてくるローにキッドは苦笑した。
何かとアレな野郎だと思っていたが、どうやら予想以上らしい。
この欲しがり、と罵って裸の腰骨に噛みつくと、ローの喉がひくりと鳴った。
上下する喉仏も昂った熱も同じ男のそれなのに、どうしてかおかしなほどそそられる。
乱した上衣はそのままの方が淫らな気がして脱がせることはしなかった。
キッドの意図に気づいたらしいローはわずかに白い歯を覗かせて笑う。

「余裕じゃねェか」
「そう、見える、か?」
「まァ……下半身以外はな」
「サド野郎。くたばれ」
「うるせェ」

薄い腹に向かって反り返ったペニスを根元から擦り上げれば、憎まれ口は堪える吐息に変わる。
ひそめる眉は扇情的で、生きている気配のない白い肌に朱がさすのはたまらなかった。
ひとつふたつ皮膚の柔らかい場所に噛みついて不格好な鬱血を残し、膝を立たせるとローが腰を捩る。
見せろ、と引き戻せば耳を詰ったのは悪趣味と嗤う低い声だった。

「あんま萎えることばっか言ってんじゃねェよ」
「どこ、が、萎えて……っ」
「おれもまだ枯れちゃいねェからな。メンタルなもんだ」
「ははっ……、似合わねェ…ッ」

黙れと睨み上げても効果がないのは知っていた。
だから代わりに震える先端を口に含むと、息を呑んだローの脚が突っ張った。
まるでやめろとでも言いたいように脚の間にあるキッドの頭を両手で押さえてくる。
だがすでに大した抵抗になっていないそれは黙殺された。
我ながらよく口に含めたものだとキッドは思うが、さほど抵抗も嫌悪感もない。
これが別の男ならと一瞬考えたものの、ロー以外の男に欲情を覚えたことはないから早々に思考を振り切った。
どこをどうされれば我慢が効かなくなるかくらい、さすがに長いこと男として生きているから嫌というほど知っている。
手順を追うのは簡単だった。

「ッぁ、ア、ユースタ、ス屋ァ……ッ」

太腿というには細い、その内腿が震えるのには興奮した。
滲み出してくる先走りは苦味が増して、時折ひゅうと吸い込む息の音に余裕がないのを悟る。

「どっちだ?」
「ぅ、あ……?」
「このままいっぺんイッちまうのと。それともケツいじられた方がいいか?」
「ッは……好き、に…」
「……殊勝だな」

ふと唇を弛ませて、色濃くした先端にぐるりと舌を回し、ベッドサイドのチェストに用意されたジェルを片手で開ける。
乱暴に絞り出して手指に絡め、割り開いた脚の間、その奥に指先を伸ばした。
触れた瞬間わずかに腰を引いたローが気になったが、強引に引き寄せて暴く。

「ふ、……ッ、ん」

唇を手の甲で覆うようにしてローが息を詰める。
少しの間そうしていたと思うと、やがてゆっくりと溜めた息を吐きだした。
まるでそれをはかったかのようにキッドの指先がローの内部に呑み込まれ、熱い内壁がひくついて誘った。

「――……んだァ?どんだけの野郎咥え込んだらこんななるんだよ」

長い指の中ほどまでが呑み込まれたに過ぎないが、慣れた女ほどとまではいかなくともきつく拒まれるような抵抗はない。
男を抱いたことはないから確かなことは言えないが――…

「は、ぁ。そこじゃ……ねェ、ユースタス屋」

知らず眉を寄せていたキッドの耳に届いたローの声はかすれて、けれど先をねだる媚を含んでいる。
自分の唇を覆っていた手をそのまま伸ばして、指先はキッドの頬をなぞって唇を這う。

もっと。
腰を回してゆるりと虚ろに笑ってみせる表情に思わず奥歯を噛み締めたのは、キッドの意識の外で行われたことだった。

next.(R-18)


細切れにしてすみませんまだ続きます。 << Back