「ッふ……がっ、つく、な、ユー…ス、タス屋…っ」 「黙ってろ性悪」 「は…、息、もたね……ッ」 「うるせェ、って…」 言ってんだろ。 続くはずだったキッドの言葉は、つい今しがた息がもたないと泣き言を吐いた男の唇に遮られた。 一瞬の余韻を残して、すぐに離れたそれがゆるりと弧を描く。 だから性悪だと言うのだ。 組み敷いた身体は着衣を乱してすらいないというのに眩暈がするほどの艶をともなってキッドを誘う。 キッドの紅が移った、濡れた唇。わずかばかり上気した頬。 悪戯に唇をなぞってくる不健康なその指に、キッドは迷わず噛みついた。 安っぽいモーテルを宿ごと買えるような金をカウンターに叩きつけて、客はもちろん数の少ない従業員までまるごと追い出したのは十分ばかり前のことだ。 触れるだけで離れた唇の意味を問うこともしなかった。 ただどくりと脈うった何かが強烈な飢餓感を訴えただけだ。 伸びてきた腕を掴んで、安宿に構わず引きずり込んだのは道理だった。 畜生、とキッドは内心臍を噛む。 これだから目を合わせてはいけないと思っていたのに、気づかないうちに囚われていた。 噛みついた指からは、じわりと鉄の味が沁みてくる。 小さな痛みに寄せられたローの眉は悩ましげで、口内に潜り込んだ指はキッドの舌を弄び始める。 勝手してんじゃねェ。 己の歯が傷つけた指先に舌を遊ばれるまま、キッドはローに手を伸ばす。 触れた身体は予想どおりに体温が低く、けれど意外なほど肌が指に馴染む。 脇腹が弱いのか、ローの肩がふるりと震えた。 「そそる、なァ、ユースタス屋」 はぁ、と濡れた吐息で空気を震わせながら、浮かされたようにローが呟く。 そそるのはてめェの方だと言ってやりたかったが、つけあがりそうなのでやめておく。 口達者な男はこちらのプライドを好きに踏みにじってくれそうだ。それは我慢ならない。 ベルトを抜けば、細身から下衣を剥ぎ取るのは簡単だった。 ロー自ら脱ぎ落しているといっても過言ではない。 わし掴んだそれをベッドの下に放り投げれば、お返しだとばかりにコートを乱された。 半身だけずるりと肩から落ちたコートを、キッドはいつになく乱暴に脱ぎ捨てる。 スタッドが床に当たる音がする頃には、ローの指を引き抜かせて唇に噛みついていた。 舌に残った錆びた味を分け与えるように絡めて、きつく吸った後に甘く噛むとローの脚が引き攣るのが分かった。 元来、感じやすい質らしい。 「……んだァ?もう勃たせてんのか、てめェ」 「ぅる、せ……ッァ、」 割り開いた脚の間に潜り込ませた膝を擦りつけると、ローの細い眉が寄せられた。 噛み殺し損ねたらしい小さな喘ぎを聞いてしまえば、キッドの余裕も剥がれ落ちる。 「っはァ……」 膝をきつめに押しつけて、すでに皺の目立ち始めたパーカーを捲り上げる。 臍の周りから順に嘗め上げるのに、ローは恍惚とした表情で唇を震わせた。 next.(R-18)
次も色気のないお色気が続きますすみません。 << Back