2012.07.20  M-aria(青黒♀)




※女体化です。
高校教師青峰×高3テツナちゃん。テツナちゃん呼びお借りしています。



細い天窓から差し込む夕陽だけが頼りのそこは、滅多に風も通らないせいかわずかにかび臭い。
厚くもないのに重い鉄製の扉は滑りが悪くて、生徒には不評だ。
バスケットボールやバレーボールの溢れる籠、そうそう使われない三角コーンに昇降用の踏み台、何に使うのかフラフープまで。
所狭しと並べられたそこは、体育館の隅、生徒が出入りを好まない体育倉庫だ。その一角、大部分を陣取った跳び箱の上である。

「ッは、あ、せんせっ……」

ようやく離された唇が、じんと痺れる。
吐息の触れる距離で見える青峰の青い瞳が欲を湛えていて、黒子はぶるりと背を震わせた。

「……ガキのくせに、えろい顔しやがって」

鼓膜を侵すバリトン。かすかに、汗の匂い。
青峰の頭を抱きかかえるように青峰の肩から背の方へと回された黒子の腕は、手首を縄跳びで拘束されている。
ふりほどこうにもふりほどけない、そんな間近な位置で青峰の舌が自らの唇をぺろりと舐める姿を見せられて、その仕草に弱い黒子はきゅうと小さく唇を噛んだ。
黒子が恥ずかしがるのも、青峰の男臭い仕草に弱いのもわかっていて、すべて演出する青峰はずるい大人だ。
年若い黒子にその手管を惜し気もなく披露してみせる悪い男が、黒子が無意識に太腿を擦り合わせたのに気付かないはずがない。
乾いた指先が、瑞々しく張った黒子の細い太腿をするりと撫でた。

「や、っ」

そのまま脚の付け根へと這っていくのに、黒子の腰が逃げをうって狭い跳び箱の上でずり上がる。
どうしてもとねだって黒子が手に入れた青峰が昔使っていた体操着は、黒子の身体には大きい。
お尻まですっぽりと隠れてしまうそれだけれど、いまの黒子にはそれで都合が良かったのだ。
シュートを決められなかった罰だと冗談交じりに、けれど実行した青峰によって脱がされてしまったブルマとランジェリーが、跳び箱の端にぽいと置かれている。
跳び箱の上に敷かれた青峰のジャージの上着が、先ほどからごわごわと黒子の肌に当たっていた。

「やっ、だめです、あ、せんせ……っ」
「……なァにが、だめ、だよ。あァ?」

細い腰を撫でさすり、脚の付け根の際どい場所を指先でくすぐって、青峰は意地が悪そうに薄く笑んだ。
右の手でそんな悪さをしながら、体操着の下に潜り込んだ左手で黒子の背を抱き寄せる。
そのついでに、流れるような動作でホックを外してしまった。びくん、と黒子の肩が跳ねる。
先生、と舌足らずに呼んで力なく首を横に振ってみせても、それは逆効果というものだ。

「ん、ふっ……、んぅ」

不安そうな視線を寄越した黒子を宥めるようにこつりと額を合わせた後、青峰はぷくりとした唇に丁寧に口づけた。
歯列をなぞり、口蓋をくすぐって小さな舌を吸うと、まだ上手く息継ぎの出来ない黒子がそれでも甘く鼻を鳴らして応える。
きっとその手が自由だったら青峰のTシャツを握りしめていただろう。
そう出来ない代わりにもじもじと脚を擦り寄せる黒子がひどく可愛らしく、同時に淫らだ。

「んんっ、ん」

青峰は背を抱き込んで深く口づけながら、その左手でまだ覆ってしまえるほどの胸にいやらしく触れた。
黒子の細い身体は、青峰の腕にすっぽりと収まってひと抱えに出来てしまう。
どくどくと速い鼓動と、汗ばんでしっとりと吸いつくような肌がアンバランスで幼気だった。
小振りながら形の良い胸の先でつんととがった乳首を、指の間で挟んでこねるように刺激する。
くん、と鼻に抜ける甘い声で鳴いた黒子が、拘束されたままの手をもどかしげに動かした。
こりこりとした弾力を返す乳首をひとしきり弄って、太腿を撫でていた青峰の手が再び這い上がる。

「ン、んあ、あっ」

丈の長い体操着の下、密やかに息づいていた箇所に触れられて、黒子がびくりと唇を離した。
つ、と伝った唾液を追いかけるように青峰の舌が黒子の唇を舐めて、仰け反った喉元へと口づける。
くちゅりと卑猥な音が耳に届いて、黒子はぞくぞくと駆けあがる快感に唇をわななかせた。

「やっ、アッ、先生っ……」
「ん〜?」
「そこ、やっ、あッ」
「こんなにあっつくしてんのにか?」
「あァッ」

くに、と肉芽を押し潰すように青峰の浅黒い親指が動いて、長い中指と薬指が襞の形を確かめるようにそっとなぞった。
指先に伝わる高い熱に、青峰が満足そうに笑う。
中心に触れれば既に蜜が溢れていて、熱いぬめりを青峰に伝えた。

「……やらしくなったもんだなぁ、テツ?」

にやりと不敵な笑みを寄越されて、黒子の頬にかあっと朱が走る。
ずるい。ずるい。全部全部、どう見えているかわかっていて、そんな風に笑うのだ。
青峰の見せる男っぽい表情が、黒子は好きで好きでたまらない。
じん、と下腹に甘い疼きが走って、ふるりと睫毛を震わせた。

「っ誰のせいだと、思って……っ」

悦楽に酔って潤んだ瞳で睨みつけられても、憎まれ口と思って叩かれる台詞も、青峰にとっては逐一煽られている気にしかならない。
この身体に一番最初に触れたのは、他でもない青峰だ。
黒子は、ずっとずっと可愛がっていた、年の離れた妹のような存在だった。



家が近所だという理由で留守の間の世話を任されたとき、まだ中学生で反抗期真っ盛りだった青峰はひどく反発したものだ。
子どもの相手なんかしたことがない、と匙を投げた青峰だったが、予想に反して黒子は大人しい子どもだった。
見知らぬ青峰の家のリビングで不安そうにしながらも、持参した絵本を一人じっと静かに読んでいた。
そんなことが何度か続いて、いつだったろう、あれは台風の近づく日の午後だった。
祖母の入院にどうしても付き添わなければならない黒子の母は、幼い黒子を青峰の母に預けていったのだ。
黒子の相手をしていた母が雨がひどくなってきたのを気にして、父を迎えるために車で出て行った、そのすぐ後だった。
どぉん、と大きな音を立てた落雷は、辺り一帯に停電をもたらした。
早めの帰宅を言い渡されてリビングでNBAの試合録画を見ていた青峰は、突然の中断に舌を打った。
携帯があるから光源には困らなかったのだが、せっかく盛り上がりを見せた第3Q、その途中であったのにと。
しばらくは停電が続くだろう。
懐中電灯でも探してくるかと重い腰を上げたところで、ふえ、と小さな泣き声を聞いたのだ。

「あ…?」

そういえば、と思い出したのは、あの小さな水色の子どもである。
青峰の母が慌ただしく家を出て行ってから、青峰は一度も後ろを振り向いていない。
あの子はいったいどこにいた。
そう考えたところで、すうっと血の気の引く思いがした。
この暗いなか、幼子にはさぞかし恐ろしいことだろう。
青峰にだって小さなころ、雷を怖がった苦い記憶がある。まして相手は女の子。
なぜ気づかなかったのだと自らを責めて、青峰は薄ぼんやりとしたリビングの中、黒子の小さな姿を探した。
彼女の名前は、確かそう、

「……テツ!どこだ!」

名前を呼べば、ひくっと息を飲む気配があった。
携帯のわずかな明かりで照らしながら再びどこにいるのだと問えば、ここです、と確かに聞こえた声。
ダイニングテーブルの下、椅子の足にすがりついて、彼女は小さくなっていた。
その頬がもう、涙でしとどに濡れている。

「…悪かった」

一人にして、とぽんぽんと頭を撫でながら、椅子にすがる強張った指先をひとつずつ丁寧に外してやる。
ぺたりと床にへたりこんだ黒子を抱き上げ、その頭を胸もとに押し付けるようにしながら、

「大丈夫だ、怖くねぇよ」

オレが、いるだろ。
言い聞かせながら背を撫でるうち。
ようやく震えの収まった黒子が顔を持ち上げて、ふにゃりと、涙の残る顔で笑ったのだ。
大人しく、無表情だとすら思っていた彼女の心から安心した笑みは、青峰の心臓をわし掴んだ。
以来、まるで兄妹のように彼女に接し、桃井と二人して可愛がってきたのだ。
途中、同級生であった黄瀬にまでバレて面倒なことになったのは余談であるが。

あれから、もう十年余り。
自分は母校である高校の教師になり、彼女はそこへ入学してきた。
黒子に向かう思いが妹に抱く親愛から形を変えたのは、彼女が中学生の頃。
青峰を慕って懐いてくる姿にひどい劣情を抱くようになって、胸のうちに溜まる黒いものを吐き出すべく青峰は女達を渡り歩いた。
相手には困らなかったからだ。
幼馴染みの桃井まで眉をしかめるほどに女遊びを繰り返して、けれど何ひとつ満たされることなく空虚へと返る。
小学校から続けていたバスケの相手もすることなく、黒子から目を背けるために黒子を避け続けていたある日。
院からの帰り道、夜も更けた時間であったのに、青峰が当時下宿していたアパートの前で彼女は待っていたのだ。
呆然とした青峰が掠れた声で「どうして」と問えば、「それはこちらの台詞です」と言葉が返った。
どうして避けるんですか。
どうして顔を見てくれないんですか。
…どうして、離れていったんですか。
矢継ぎ早に問う彼女の頬には、幼い頃のいつかのようにぼろぼろと涙が伝っていた。
桃井からすべて聞いた、と言った。青峰が決まった相手を作らずに遊び歩いていることも、その理由が自分にあるらしいことも。
妹として可愛がっていた黒子を欲望の対象として見てしまうだなんて桃井にも告げたことはなかったのだが、あの幼馴染みのことだ、早々に察したのだろう。
青峰の方が煮え切らぬならと黒子を焚きつけたのも想像に難くない。
理解はできても、納得はいかなかったが。
泣きながらも青峰をまっすぐに射抜く水色と、いからせながらも震える肩にずきりと胸が痛んだ。
こんな顔をさせたかったわけではないのに。

「…こんな遅くちゃ、親、心配すんだろ。送ってくから帰んぞ」
「嫌です。絶対に帰りません」
「テツ、」
「ぼくは…っ」

君が好きなんです。
そのとき、そう告げられた。
兄としてでなく、一人のひととして、男として、青峰のことが好きなのだと。
馬鹿を言うなとなけなしの理性を振り絞って黒子に言ったのに、彼女は一歩も譲らなかった。
そんなに女遊びがしたいのなら、自分のことも同じように扱えばいいのだとまで。
これには青峰の方が怒った。ふざけるなと怒鳴った青峰に、ふざけているのは君の方ですとまた意志の強い泣き声が返る。
幼くても、勘違いでもなんでもなく青峰のことが好きだから、それだけは否定しないでほしい。
自分だけを見てほしいだなんて言わないから、そばにいることを許してほしい。

「…好き、っ、なんです、ぉみ、ねく…ッ」

一生懸命で健気な告白に、理性だの常識だの、面倒なものは全部吹っ飛んだ。
最後には震えながら、小さな小さな声で言った黒子を無我夢中で抱きしめて、めちゃくちゃにキスをする。
幼く細い身体をドアの前に押し付け、逃げ場を奪って、愛しくて切なくて、ただ。
呼吸の続かなくなった黒子がへたりと崩折れそうになったころ、ようやく唇を離してその身体を支えて、青峰は思いの丈を吐き出したのだった。

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