初めて抱いたのは、黒子が高校に合格した翌日のこと。
すでに教師として働き始めていた青峰のアパートで二人、ささやかな祝いをした後だ。

「今日は外泊すると言ってきました」とほんのり頬を赤く染めて言った黒子は犯罪的に可愛くて、青峰は誰も知らぬ黒子の肌に触れたのだ。
もちろんこの先、誰に触れさせてやるつもりもない。
まっさらな身体を少しずつ少しずつひらいて、自分の好みに作り変える。
ひと回り違う年若い黒子にこうして快楽を教え込むのに、不思議と罪悪感はない。
けれど教師でありながらという背徳感と、どうにも御し難い征服欲とが青峰を突き動かした。
時間はまだ、たっぷりとある。焦る必要はどこにもない。
ゆっくりと花開くように黒子の身体を暴いて好みの色に育てていくことに、青峰は深い満足を覚えていた。

「んっ、あ、ァ、ゆび、だめっ…」
「うるせえ」

飽きることなく黒子の肌に唇を落としながら、悪戯な青峰の指先が這い回る。
ぬち、と濡れた音を立てて襞が開かれ、浅く埋まった指が上下する。
物足りなくてねだってしまうように動く腰は無意識だ。ぷくりと勃ち上がった芽を親指が擦り、時折爪弾くように軽く叩く。
青峰の指にすっかり慣らされてしまった黒子の身体が、その度にびくびくと艶めかしく跳ねた。
ぐ、と体操着をたくし上げられて、黒子の肌が露わになる。
夕陽のオレンジ色の光が照らす肌は、淫らに上気して瑞々しい。
甘い刺激にぼんやりと宙を漂っていた黒子の視線が、青峰へと戻る。
ちゅ、とその唇をついばんだ後、青峰はぐいと黒子の脚を開かせた。

「っや、やです、あおッ…!」

青峰くん、と思わず名前を呼んだ黒子が焦ったように脚を閉じようとして、がたりと跳び箱が鳴った。
きっと青峰の意図に気付いたのだろう、脚をばたつかせる黒子に、浅いところを弄っていた指を深く突き入れてその抵抗を遮る。

「ッあぁ……!」

弱い粘膜を乱暴に擦った青峰の太い指に、黒子が高い声を上げて身体を強張らせた。
青峰の指を咥え込んできゅうきゅうと締め付けてくる柔襞をなだめるように撫で、露わになった小さな臍に口づけた後、ぬぷりと指を引き抜いた。
ゆっくりと黒子の身体を倒し、抵抗の止んだ脚を再び広げ、青峰は指を引き抜いた箇所へと鼻先を埋める。

「や、やあっ、ぁおみ、ねくん…ッ!」

高い鼻先で肉芽を刺激しながら青峰を受け入れる場所へ舌を這わせると、黒子がいやだと泣き声を上げた。
最初にこうして愛撫を施したのはいつだったろう。そのときも同じように黒子は嫌がった。
舌を差し入れれば悦んで内壁をうねらすくせに、いつまで経っても素直にならない。
恥ずかしくて、気持ちよくて、頭が真っ白になるからいやだ。
そう泣きながら訴えるから、却って青峰がやめてくれないのだとは気付けない。
何度行為を重ねても慣れない、そんな初心なところまで、青峰にとっては可愛い限りだ。

「ああっ、ァ、め、っだめ…!」

ちゅぷちゅぷと濡れた音を立てて潜り込んでくる舌先が黒子の快楽中枢を犯す。
耳を塞ぎたいのに拘束された手ではそれもできなくて、黒子はせめてもと顔の近くまで腕を引き寄せた。
青峰の大きな手にがしりと掴まれた太腿はすっかり左右に広げられていて、全部全部、青峰に晒け出されている。
脚を閉じようにも青峰の力に敵うはずもないし、なにより、溶けきった身体に力が入らなかった。
ちらりと視線を送れば青峰の濃い青色をした髪が自分の下腹に埋まっていて、見ていられなくてぎゅうと目を瞑る。
敏感なところを吸い、くすぐるように舐めては中へと潜ってくる熱い舌に翻弄されて、耐え切れずに唇が震え、噛み合わない歯がかちかちと鳴った。

「あおっ……、青峰くん、も、離して、はなしてくださッ…!」

お願いだから、はなして。
黒子の身体の中で熱い奔流が渦を巻いて、捌け口を求めている。
お願い、と繰り返し訴える黒子に耳を貸さない青峰が、秘所からぬるりと舌を引き抜いた。
代わりに、太い指が蕩けてぬかるんだそこへ沈む。

「ッいや、あっ、あ、あッ」

ぐちぐちと粘着質な音を伴って抜き挿しされる遠慮を知らない青峰の指。
ひどく弱い、内壁のざらざらして張り詰めた場所を容赦なく擦られ、一番敏感なところを、じゅ、と吸われた瞬間、張り詰めていた悦楽の糸が、ぷつりと弾けた。

「ッ、やァ――…っ」

びくん、びくん、と脚が跳ね、高く尾を引く甘く濡れた声を上げて、黒子が達する。
ひくひくと痙攣する薄い腹と、指を咥え込んで締め付ける濡れた秘所とを視界に収めて、青峰が身体を起こした。
黒子の身体の下に敷かれた青峰のジャージが、濡れて卑猥に色を変えている。
引き抜いた指を追うように、とくりと蜜が溢れて滴る。
ぬめった唇を舌で拭った青峰が、くたりと力の抜けた黒子の拘束を外した。

「ァ、あ、みね、く……っ」
「ん…、ほら」

背を抱いてゆっくりと起こしてやると、ようやくすがるものを見つけた幼子のように黒子の腕が青峰の首に絡みついた。
ぎゅうと抱き寄せて安心したのか、ほう、と黒子の唇から溜息が零れる。
抱きしめて、とんとんとあやすように背を叩くと、黒子がいっそうしがみついてくる。
落ち着けよ、とこめかみに唇を落として、青峰は黒子の汗ばんだ髪を掻き上げた。
薄い水色の、綺麗な髪だ。
青峰の首筋に顔を埋めて呼吸を落ち着けていた黒子に呼ばれた気がしたのと同時に、ぬるりと首筋を舌が這う。

「っ、おい、テツ…」
「……続き、して、ください…先生」

欲しい。そう耳元に吹き込む吐息混じりのハスキーな声に、内心歯噛みしたくなる青峰だ。
黒子のこういうところがタチが悪いと、そう思う。
本人は欲しいものをねだっているだけのつもりで、他意がないから余計にだ。
これがいつか駆け引きを覚えたならと、青峰は末恐ろしく思う。

「っくそ、知らねェぞ…!」
「んんっ」

唸るように低く口にした青峰にぽってりとした唇を塞がれて、乱暴に這い回る舌に呼吸を奪われる。
舌先を甘く噛まれ、きつく吸い上げられては苦しいほど舌が絡んできて、黒子の白い頬をはらはらと涙が伝い落ちた。
青峰の髪を掻き乱すように指先を絡めながら、ぎゅっと広い背を抱く。
青峰のたくましい腕が黒子の片脚を抱え上げて、昂った青峰の熱がひたりと宛がわれた。
ぐぐ、と濡れた柔襞を割って侵入してきたその熱に、黒子は背を仰け反らせる。

「っひ、んぅッ、ぁお、青峰、く……!」
「テツ…、ほら、力抜け…っ」

先端を潜り込ませただけできゅうきゅうと締め付けてくる熱い襞に、たまったものではないと青峰が唇を噛んだ。
いったいこれまでに何人の女を泣かせてきたのだったかと考えて、そんな経験がまったく役に立たないことに苦笑する。
身体だけではなくて、心まで全部繋がったセックスをするのは黒子が初めてだ。
青峰は女にせがまれて事に及ぶことや性欲処理的に身体を繋げることはあっても、誰かを想って誰かに想われることは面倒だと最初から投げてしまっていた。
部活漬けの毎日は充実していて、バスケ以上に愛せるものは当時の自分には存在しなかったし、幸か不幸か適当に相手をしてくれる女には昔から恵まれていたからだ。
「恋愛」なんてものからは、意図的に目を背けていた。
自分の醜い欲で汚してしまってはいけないと思い込んでいた女が、ただ一人存在したから。
もとよりそれで支障はなかったし、きっと今生はそうして生きていくのだろうと達観してさえいたのだが。
まさかこの歳になってと、いささか恥ずかしく思うのも事実である。
「初恋」なんて甘酸っぱいものが、まさか成就するとは思わなかった。
人生とは本当にわからないものだ。

「っあ、ああ、せんせ、もっと、もっと…ッ」
「……ッ、この、馬鹿」

ねだる黒子を跳び箱の上から下ろし、両腕で黒子の両脚を抱きかかえる格好で若い身体を貪る。
背を預けるもののない黒子が必死で青峰にしがみついて、名前を呼んで、甘い吐息を零した。
腰を揺すって突き入れる度、がくがくと黒子の頭が揺れて上気した頬を涙が伝う。
閉じることの出来ない唇から、ちらちらと熟れた赤い舌が見え隠れした。
唇の端から唾液が伝い、眉根を寄せて、感じ入って仕方がないのだという蕩けた表情が、青峰の劣情をただ煽る。
青峰の形を覚えた柔襞が従順に開いて青峰を迎え入れ、ぐちゅぐちゅと泣いては与えられる熱を甘受した。

「イッ、あ、あーっ、ァ……!」

ひくん、ひくんと不規則に締め付ける内壁が高みへ昇る熱を伝える。
抱えた太腿にも不自然に力が入って震えていて、絶頂が近いのだとわかった。

「ッ、イきそうか」
「んっ、は、ぅんっ…、ぉみ、だめ、だめ、も…っ」

ゴツゴツと骨が当たるほど奥まで突き入れ、泣き喘ぐ黒子の唇を塞ぐ。
律動によってすぐに離れる唇を、それでも互いの舌が追いかけた。
粘膜の擦れ合う生々しい音も、紡がれる荒々しい吐息も、触れる肌の熱さも全部、全部愛しい。
だめ。いや。もう、壊れる。泣いて、訴えて、すがって、黒子は青峰の背に爪を立てた。
短く揃えられた爪が付ける傷はさほど深くはないけれど、ぴりぴりと引き攣るような疼痛が走る。
そんな痛みもまた愛しいのだと、どうやって伝えよう。
ぎ、と奥歯を噛み締めながら、青峰はぐっと黒子の深いところへと熱を叩き込んだ。

「んあッ、ァ、ひあ…ッ、あぁっ!!」

眩暈がするような悦楽のなかで再び昇り詰めた黒子の、余韻にひくつく内壁を更に犯して、もうだめ、と泣いて抱きつく身体を抱きしめて、青峰は黒子の腹へと白濁を散らした。

「あ、あ、あつ…ぃ、せんせ……」
「……だから、おまえは…」

どうしたらその不用意な発言がなくなるのだと、常よりもずっと速い呼吸の下で青峰が苦く笑う。
また犯されたいのかと、唾液の伝う顎を舐めてやりながら背を撫でた。
先ほどまで黒子が腰を預けていた跳び箱の上に腰を下ろし、青峰は膝の上へ抱え上げた黒子が落ち着くのを待った。
外してしまったホックを留めてやり、脱がせたランジェリーを引き寄せて、さて、と惨状に目を向ける。
先ほどまで眩しいほど射し込んでいた夕陽もすっかり陰りを見せて、きっともうすぐ明かりがいる。
こういった倉庫には大抵懐中電灯が備えてあるものだが、それを取りに行くために黒子を離す気にはなれなかった。
幸いにしてジャージを犠牲にしたおかげで跳び箱を汚してはいないけれど、生々しい痕跡の残る床は雑巾を持ってこなければならないだろうし、なにより黒子がこのまま身体を冷やしてしまっては一大事だ。
風邪を引かせようものなら同じく幼い頃から黒子を可愛がっている桃井が黙っていないだろうし、同僚の美術講師である黄瀬もうるさいだろう。
何より、理事まで牛耳る学年主任の赤司の耳に入りでもしたら一巻の終わりである。
職権濫用でシャワー室でも使わせて頂いて、ついでに救護室で少し休ませてやるのもいいかもしれない。
どうせ春休みだ。誰が学校にいるわけでもない。
いたところで、先ほど頭に浮かべた三人を除けば青峰に口出しできる人間の方が少ないのだが。
とりあえずはと頭の中で算段する最中にくたりと青峰にすべてを預けていた黒子が身じろいで、青峰はそちらへと意識を戻した。

「テツ…?大丈夫か」

耳元で吹き込むように声をかけ、汗に濡れた柔らかい髪を梳いた後。
ようやく呼吸の落ち着いた黒子のまぶたに、青峰がふわりと口づける。
平気です、と呟くように答えた黒子は青峰の首筋に頭を擦り寄せ、

「…好きです、先生」

小さく告げた。





→あとがき
別ジャンルで書いた女体化(今はもう公開してません)を下地に青黒で加筆修正。
桃井さん→音楽の先生
黄瀬くん→美術講師(非常勤)
青峰くん→体育教師(バスケ部顧問)
赤司くん→学年主任(僕に逆らう奴は理事でもピー)
緑間くんは生徒会長で紫原くんはテツナちゃんのクラスメイト。
火神くんもテツナちゃんのクラスメイト。テツナちゃんをよく餌付してる。
初めましてこんにちは、はテツナちゃん小学校1年生(6)、青峰くん中学3年生(15)。
告白劇はテツナちゃん中学3年生(15)、青峰くん大学院2年生(24)くらい。
で、このお話はテツナちゃん高校3年生(18)、青峰くん高校教師(27)です。
早生まれの年齢計算を途中で諦めたので間違ってても目瞑ってやってください…。


<< Back