Siva

2012.07.20 M-aria(青黒♀)


※女体化です。
高校教師青峰×高3テツナちゃん。テツナちゃん呼びお借りしています。



細い天窓から差し込む夕陽だけが頼りのそこは、滅多に風も通らないせいかわずかにかび臭い。
厚くもないのに重い鉄製の扉は滑りが悪くて、生徒には不評だ。
バスケットボールやバレーボールの溢れる籠、そうそう使われない三角コーンに昇降用の踏み台、何に使うのかフラフープまで。
所狭しと並べられたそこは、体育館の隅、生徒が出入りを好まない体育倉庫だ。その一角、大部分を陣取った跳び箱の上である。

「ッは、あ、せんせっ……」

ようやく離された唇が、じんと痺れる。
吐息の触れる距離で見える青峰の青い瞳が欲を湛えていて、黒子はぶるりと背を震わせた。

「……ガキのくせに、えろい顔しやがって」

鼓膜を侵すバリトン。かすかに、汗の匂い。
青峰の頭を抱きかかえるように青峰の肩から背の方へと回された黒子の腕は、手首を縄跳びで拘束されている。
ふりほどこうにもふりほどけない、そんな間近な位置で青峰の舌が自らの唇をぺろりと舐める姿を見せられて、その仕草に弱い黒子はきゅうと小さく唇を噛んだ。
黒子が恥ずかしがるのも、青峰の男臭い仕草に弱いのもわかっていて、すべて演出する青峰はずるい大人だ。
年若い黒子にその手管を惜し気もなく披露してみせる悪い男が、黒子が無意識に太腿を擦り合わせたのに気付かないはずがない。
乾いた指先が、瑞々しく張った黒子の細い太腿をするりと撫でた。

「や、っ」

そのまま脚の付け根へと這っていくのに、黒子の腰が逃げをうって狭い跳び箱の上でずり上がる。
どうしてもとねだって黒子が手に入れた青峰が昔使っていた体操着は、黒子の身体には大きい。
お尻まですっぽりと隠れてしまうそれだけれど、いまの黒子にはそれで都合が良かったのだ。
シュートを決められなかった罰だと冗談交じりに、けれど実行した青峰によって脱がされてしまったブルマとランジェリーが、跳び箱の端にぽいと置かれている。
跳び箱の上に敷かれた青峰のジャージの上着が、先ほどからごわごわと黒子の肌に当たっていた。

「やっ、だめです、あ、せんせ……っ」
「……なァにが、だめ、だよ。あァ?」

細い腰を撫でさすり、脚の付け根の際どい場所を指先でくすぐって、青峰は意地が悪そうに薄く笑んだ。
右の手でそんな悪さをしながら、体操着の下に潜り込んだ左手で黒子の背を抱き寄せる。
そのついでに、流れるような動作でホックを外してしまった。びくん、と黒子の肩が跳ねる。
先生、と舌足らずに呼んで力なく首を横に振ってみせても、それは逆効果というものだ。

「ん、ふっ……、んぅ」

不安そうな視線を寄越した黒子を宥めるようにこつりと額を合わせた後、青峰はぷくりとした唇に丁寧に口づけた。
歯列をなぞり、口蓋をくすぐって小さな舌を吸うと、まだ上手く息継ぎの出来ない黒子がそれでも甘く鼻を鳴らして応える。
きっとその手が自由だったら青峰のTシャツを握りしめていただろう。
そう出来ない代わりにもじもじと脚を擦り寄せる黒子がひどく可愛らしく、同時に淫らだ。

「んんっ、ん」

青峰は背を抱き込んで深く口づけながら、その左手でまだ覆ってしまえるほどの胸にいやらしく触れた。
黒子の細い身体は、青峰の腕にすっぽりと収まってひと抱えに出来てしまう。
どくどくと速い鼓動と、汗ばんでしっとりと吸いつくような肌がアンバランスで幼気だった。
小振りながら形の良い胸の先でつんととがった乳首を、指の間で挟んでこねるように刺激する。
くん、と鼻に抜ける甘い声で鳴いた黒子が、拘束されたままの手をもどかしげに動かした。
こりこりとした弾力を返す乳首をひとしきり弄って、太腿を撫でていた青峰の手が再び這い上がる。

「ン、んあ、あっ」

丈の長い体操着の下、密やかに息づいていた箇所に触れられて、黒子がびくりと唇を離した。
つ、と伝った唾液を追いかけるように青峰の舌が黒子の唇を舐めて、仰け反った喉元へと口づける。
くちゅりと卑猥な音が耳に届いて、黒子はぞくぞくと駆けあがる快感に唇をわななかせた。

「やっ、アッ、先生っ……」
「ん~?」
「そこ、やっ、あッ」
「こんなにあっつくしてんのにか?」
「あァッ」

くに、と肉芽を押し潰すように青峰の浅黒い親指が動いて、長い中指と薬指が襞の形を確かめるようにそっとなぞった。
指先に伝わる高い熱に、青峰が満足そうに笑う。
中心に触れれば既に蜜が溢れていて、熱いぬめりを青峰に伝えた。

「……やらしくなったもんだなぁ、テツ?」

にやりと不敵な笑みを寄越されて、黒子の頬にかあっと朱が走る。
ずるい。ずるい。全部全部、どう見えているかわかっていて、そんな風に笑うのだ。
青峰の見せる男っぽい表情が、黒子は好きで好きでたまらない。
じん、と下腹に甘い疼きが走って、ふるりと睫毛を震わせた。

「っ誰のせいだと、思って……っ」

悦楽に酔って潤んだ瞳で睨みつけられても、憎まれ口と思って叩かれる台詞も、青峰にとっては逐一煽られている気にしかならない。
この身体に一番最初に触れたのは、他でもない青峰だ。
黒子は、ずっとずっと可愛がっていた、年の離れた妹のような存在だった。



家が近所だという理由で留守の間の世話を任されたとき、まだ中学生で反抗期真っ盛りだった青峰はひどく反発したものだ。
子どもの相手なんかしたことがない、と匙を投げた青峰だったが、予想に反して黒子は大人しい子どもだった。
見知らぬ青峰の家のリビングで不安そうにしながらも、持参した絵本を一人じっと静かに読んでいた。
そんなことが何度か続いて、いつだったろう、あれは台風の近づく日の午後だった。
祖母の入院にどうしても付き添わなければならない黒子の母は、幼い黒子を青峰の母に預けていったのだ。
黒子の相手をしていた母が雨がひどくなってきたのを気にして、父を迎えるために車で出て行った、そのすぐ後だった。
どぉん、と大きな音を立てた落雷は、辺り一帯に停電をもたらした。
早めの帰宅を言い渡されてリビングでNBAの試合録画を見ていた青峰は、突然の中断に舌を打った。
携帯があるから光源には困らなかったのだが、せっかく盛り上がりを見せた第3Q、その途中であったのにと。
しばらくは停電が続くだろう。
懐中電灯でも探してくるかと重い腰を上げたところで、ふえ、と小さな泣き声を聞いたのだ。

「あ…?」

そういえば、と思い出したのは、あの小さな水色の子どもである。
青峰の母が慌ただしく家を出て行ってから、青峰は一度も後ろを振り向いていない。
あの子はいったいどこにいた。
そう考えたところで、すうっと血の気の引く思いがした。
この暗いなか、幼子にはさぞかし恐ろしいことだろう。
青峰にだって小さなころ、雷を怖がった苦い記憶がある。まして相手は女の子。
なぜ気づかなかったのだと自らを責めて、青峰は薄ぼんやりとしたリビングの中、黒子の小さな姿を探した。
彼女の名前は、確かそう、

「……テツ!どこだ!」

名前を呼べば、ひくっと息を飲む気配があった。
携帯のわずかな明かりで照らしながら再びどこにいるのだと問えば、ここです、と確かに聞こえた声。
ダイニングテーブルの下、椅子の足にすがりついて、彼女は小さくなっていた。
その頬がもう、涙でしとどに濡れている。

「…悪かった」

一人にして、とぽんぽんと頭を撫でながら、椅子にすがる強張った指先をひとつずつ丁寧に外してやる。
ぺたりと床にへたりこんだ黒子を抱き上げ、その頭を胸もとに押し付けるようにしながら、

「大丈夫だ、怖くねぇよ」

オレが、いるだろ。
言い聞かせながら背を撫でるうち。
ようやく震えの収まった黒子が顔を持ち上げて、ふにゃりと、涙の残る顔で笑ったのだ。
大人しく、無表情だとすら思っていた彼女の心から安心した笑みは、青峰の心臓をわし掴んだ。
以来、まるで兄妹のように彼女に接し、桃井と二人して可愛がってきたのだ。
途中、同級生であった黄瀬にまでバレて面倒なことになったのは余談であるが。

あれから、もう十年余り。
自分は母校である高校の教師になり、彼女はそこへ入学してきた。
黒子に向かう思いが妹に抱く親愛から形を変えたのは、彼女が中学生の頃。
青峰を慕って懐いてくる姿にひどい劣情を抱くようになって、胸のうちに溜まる黒いものを吐き出すべく青峰は女達を渡り歩いた。
相手には困らなかったからだ。
幼馴染みの桃井まで眉をしかめるほどに女遊びを繰り返して、けれど何ひとつ満たされることなく空虚へと返る。
小学校から続けていたバスケの相手もすることなく、黒子から目を背けるために黒子を避け続けていたある日。
院からの帰り道、夜も更けた時間であったのに、青峰が当時下宿していたアパートの前で彼女は待っていたのだ。
呆然とした青峰が掠れた声で「どうして」と問えば、「それはこちらの台詞です」と言葉が返った。
どうして避けるんですか。
どうして顔を見てくれないんですか。
…どうして、離れていったんですか。
矢継ぎ早に問う彼女の頬には、幼い頃のいつかのようにぼろぼろと涙が伝っていた。
桃井からすべて聞いた、と言った。青峰が決まった相手を作らずに遊び歩いていることも、その理由が自分にあるらしいことも。
妹として可愛がっていた黒子を欲望の対象として見てしまうだなんて桃井にも告げたことはなかったのだが、あの幼馴染みのことだ、早々に察したのだろう。
青峰の方が煮え切らぬならと黒子を焚きつけたのも想像に難くない。
理解はできても、納得はいかなかったが。
泣きながらも青峰をまっすぐに射抜く水色と、いからせながらも震える肩にずきりと胸が痛んだ。
こんな顔をさせたかったわけではないのに。

「…こんな遅くちゃ、親、心配すんだろ。送ってくから帰んぞ」
「嫌です。絶対に帰りません」
「テツ、」
「ぼくは…っ」

君が好きなんです。
そのとき、そう告げられた。
兄としてでなく、一人のひととして、男として、青峰のことが好きなのだと。
馬鹿を言うなとなけなしの理性を振り絞って黒子に言ったのに、彼女は一歩も譲らなかった。
そんなに女遊びがしたいのなら、自分のことも同じように扱えばいいのだとまで。
これには青峰の方が怒った。ふざけるなと怒鳴った青峰に、ふざけているのは君の方ですとまた意志の強い泣き声が返る。
幼くても、勘違いでもなんでもなく青峰のことが好きだから、それだけは否定しないでほしい。
自分だけを見てほしいだなんて言わないから、そばにいることを許してほしい。

「…好き、っ、なんです、ぉみ、ねく…ッ」

一生懸命で健気な告白に、理性だの常識だの、面倒なものは全部吹っ飛んだ。
最後には震えながら、小さな小さな声で言った黒子を無我夢中で抱きしめて、めちゃくちゃにキスをする。
幼く細い身体をドアの前に押し付け、逃げ場を奪って、愛しくて切なくて、ただ。
呼吸の続かなくなった黒子がへたりと崩折れそうになったころ、ようやく唇を離してその身体を支えて、青峰は思いの丈を吐き出したのだった。


初めて抱いたのは、黒子が高校に合格した翌日のこと。
すでに教師として働き始めていた青峰のアパートで二人、ささやかな祝いをした後だ。

「今日は外泊すると言ってきました」とほんのり頬を赤く染めて言った黒子は犯罪的に可愛くて、青峰は誰も知らぬ黒子の肌に触れたのだ。
もちろんこの先、誰に触れさせてやるつもりもない。
まっさらな身体を少しずつ少しずつひらいて、自分の好みに作り変える。
ひと回り違う年若い黒子にこうして快楽を教え込むのに、不思議と罪悪感はない。
けれど教師でありながらという背徳感と、どうにも御し難い征服欲とが青峰を突き動かした。
時間はまだ、たっぷりとある。焦る必要はどこにもない。
ゆっくりと花開くように黒子の身体を暴いて好みの色に育てていくことに、青峰は深い満足を覚えていた。

「んっ、あ、ァ、ゆび、だめっ…」
「うるせえ」

飽きることなく黒子の肌に唇を落としながら、悪戯な青峰の指先が這い回る。
ぬち、と濡れた音を立てて襞が開かれ、浅く埋まった指が上下する。
物足りなくてねだってしまうように動く腰は無意識だ。ぷくりと勃ち上がった芽を親指が擦り、時折爪弾くように軽く叩く。
青峰の指にすっかり慣らされてしまった黒子の身体が、その度にびくびくと艶めかしく跳ねた。
ぐ、と体操着をたくし上げられて、黒子の肌が露わになる。
夕陽のオレンジ色の光が照らす肌は、淫らに上気して瑞々しい。
甘い刺激にぼんやりと宙を漂っていた黒子の視線が、青峰へと戻る。
ちゅ、とその唇をついばんだ後、青峰はぐいと黒子の脚を開かせた。

「っや、やです、あおッ…!」

青峰くん、と思わず名前を呼んだ黒子が焦ったように脚を閉じようとして、がたりと跳び箱が鳴った。
きっと青峰の意図に気付いたのだろう、脚をばたつかせる黒子に、浅いところを弄っていた指を深く突き入れてその抵抗を遮る。

「ッあぁ……!」

弱い粘膜を乱暴に擦った青峰の太い指に、黒子が高い声を上げて身体を強張らせた。
青峰の指を咥え込んできゅうきゅうと締め付けてくる柔襞をなだめるように撫で、露わになった小さな臍に口づけた後、ぬぷりと指を引き抜いた。
ゆっくりと黒子の身体を倒し、抵抗の止んだ脚を再び広げ、青峰は指を引き抜いた箇所へと鼻先を埋める。

「や、やあっ、ぁおみ、ねくん…ッ!」

高い鼻先で肉芽を刺激しながら青峰を受け入れる場所へ舌を這わせると、黒子がいやだと泣き声を上げた。
最初にこうして愛撫を施したのはいつだったろう。そのときも同じように黒子は嫌がった。
舌を差し入れれば悦んで内壁をうねらすくせに、いつまで経っても素直にならない。
恥ずかしくて、気持ちよくて、頭が真っ白になるからいやだ。
そう泣きながら訴えるから、却って青峰がやめてくれないのだとは気付けない。
何度行為を重ねても慣れない、そんな初心なところまで、青峰にとっては可愛い限りだ。

「ああっ、ァ、め、っだめ…!」

ちゅぷちゅぷと濡れた音を立てて潜り込んでくる舌先が黒子の快楽中枢を犯す。
耳を塞ぎたいのに拘束された手ではそれもできなくて、黒子はせめてもと顔の近くまで腕を引き寄せた。
青峰の大きな手にがしりと掴まれた太腿はすっかり左右に広げられていて、全部全部、青峰に晒け出されている。
脚を閉じようにも青峰の力に敵うはずもないし、なにより、溶けきった身体に力が入らなかった。
ちらりと視線を送れば青峰の濃い青色をした髪が自分の下腹に埋まっていて、見ていられなくてぎゅうと目を瞑る。
敏感なところを吸い、くすぐるように舐めては中へと潜ってくる熱い舌に翻弄されて、耐え切れずに唇が震え、噛み合わない歯がかちかちと鳴った。

「あおっ……、青峰くん、も、離して、はなしてくださッ…!」

お願いだから、はなして。
黒子の身体の中で熱い奔流が渦を巻いて、捌け口を求めている。
お願い、と繰り返し訴える黒子に耳を貸さない青峰が、秘所からぬるりと舌を引き抜いた。
代わりに、太い指が蕩けてぬかるんだそこへ沈む。

「ッいや、あっ、あ、あッ」

ぐちぐちと粘着質な音を伴って抜き挿しされる遠慮を知らない青峰の指。
ひどく弱い、内壁のざらざらして張り詰めた場所を容赦なく擦られ、一番敏感なところを、じゅ、と吸われた瞬間、張り詰めていた悦楽の糸が、ぷつりと弾けた。

「ッ、やァ――…っ」

びくん、びくん、と脚が跳ね、高く尾を引く甘く濡れた声を上げて、黒子が達する。
ひくひくと痙攣する薄い腹と、指を咥え込んで締め付ける濡れた秘所とを視界に収めて、青峰が身体を起こした。
黒子の身体の下に敷かれた青峰のジャージが、濡れて卑猥に色を変えている。
引き抜いた指を追うように、とくりと蜜が溢れて滴る。
ぬめった唇を舌で拭った青峰が、くたりと力の抜けた黒子の拘束を外した。

「ァ、あ、みね、く……っ」
「ん…、ほら」

背を抱いてゆっくりと起こしてやると、ようやくすがるものを見つけた幼子のように黒子の腕が青峰の首に絡みついた。
ぎゅうと抱き寄せて安心したのか、ほう、と黒子の唇から溜息が零れる。
抱きしめて、とんとんとあやすように背を叩くと、黒子がいっそうしがみついてくる。
落ち着けよ、とこめかみに唇を落として、青峰は黒子の汗ばんだ髪を掻き上げた。
薄い水色の、綺麗な髪だ。
青峰の首筋に顔を埋めて呼吸を落ち着けていた黒子に呼ばれた気がしたのと同時に、ぬるりと首筋を舌が這う。

「っ、おい、テツ…」
「……続き、して、ください…先生」

欲しい。そう耳元に吹き込む吐息混じりのハスキーな声に、内心歯噛みしたくなる青峰だ。
黒子のこういうところがタチが悪いと、そう思う。
本人は欲しいものをねだっているだけのつもりで、他意がないから余計にだ。
これがいつか駆け引きを覚えたならと、青峰は末恐ろしく思う。

「っくそ、知らねェぞ…!」
「んんっ」

唸るように低く口にした青峰にぽってりとした唇を塞がれて、乱暴に這い回る舌に呼吸を奪われる。
舌先を甘く噛まれ、きつく吸い上げられては苦しいほど舌が絡んできて、黒子の白い頬をはらはらと涙が伝い落ちた。
青峰の髪を掻き乱すように指先を絡めながら、ぎゅっと広い背を抱く。
青峰のたくましい腕が黒子の片脚を抱え上げて、昂った青峰の熱がひたりと宛がわれた。
ぐぐ、と濡れた柔襞を割って侵入してきたその熱に、黒子は背を仰け反らせる。

「っひ、んぅッ、ぁお、青峰、く……!」
「テツ…、ほら、力抜け…っ」

先端を潜り込ませただけできゅうきゅうと締め付けてくる熱い襞に、たまったものではないと青峰が唇を噛んだ。
いったいこれまでに何人の女を泣かせてきたのだったかと考えて、そんな経験がまったく役に立たないことに苦笑する。
身体だけではなくて、心まで全部繋がったセックスをするのは黒子が初めてだ。
青峰は女にせがまれて事に及ぶことや性欲処理的に身体を繋げることはあっても、誰かを想って誰かに想われることは面倒だと最初から投げてしまっていた。
部活漬けの毎日は充実していて、バスケ以上に愛せるものは当時の自分には存在しなかったし、幸か不幸か適当に相手をしてくれる女には昔から恵まれていたからだ。
「恋愛」なんてものからは、意図的に目を背けていた。
自分の醜い欲で汚してしまってはいけないと思い込んでいた女が、ただ一人存在したから。
もとよりそれで支障はなかったし、きっと今生はそうして生きていくのだろうと達観してさえいたのだが。
まさかこの歳になってと、いささか恥ずかしく思うのも事実である。
「初恋」なんて甘酸っぱいものが、まさか成就するとは思わなかった。
人生とは本当にわからないものだ。

「っあ、ああ、せんせ、もっと、もっと…ッ」
「……ッ、この、馬鹿」

ねだる黒子を跳び箱の上から下ろし、両腕で黒子の両脚を抱きかかえる格好で若い身体を貪る。
背を預けるもののない黒子が必死で青峰にしがみついて、名前を呼んで、甘い吐息を零した。
腰を揺すって突き入れる度、がくがくと黒子の頭が揺れて上気した頬を涙が伝う。
閉じることの出来ない唇から、ちらちらと熟れた赤い舌が見え隠れした。
唇の端から唾液が伝い、眉根を寄せて、感じ入って仕方がないのだという蕩けた表情が、青峰の劣情をただ煽る。
青峰の形を覚えた柔襞が従順に開いて青峰を迎え入れ、ぐちゅぐちゅと泣いては与えられる熱を甘受した。

「イッ、あ、あーっ、ァ……!」

ひくん、ひくんと不規則に締め付ける内壁が高みへ昇る熱を伝える。
抱えた太腿にも不自然に力が入って震えていて、絶頂が近いのだとわかった。

「ッ、イきそうか」
「んっ、は、ぅんっ…、ぉみ、だめ、だめ、も…っ」

ゴツゴツと骨が当たるほど奥まで突き入れ、泣き喘ぐ黒子の唇を塞ぐ。
律動によってすぐに離れる唇を、それでも互いの舌が追いかけた。
粘膜の擦れ合う生々しい音も、紡がれる荒々しい吐息も、触れる肌の熱さも全部、全部愛しい。
だめ。いや。もう、壊れる。泣いて、訴えて、すがって、黒子は青峰の背に爪を立てた。
短く揃えられた爪が付ける傷はさほど深くはないけれど、ぴりぴりと引き攣るような疼痛が走る。
そんな痛みもまた愛しいのだと、どうやって伝えよう。
ぎ、と奥歯を噛み締めながら、青峰はぐっと黒子の深いところへと熱を叩き込んだ。

「んあッ、ァ、ひあ…ッ、あぁっ!!」

眩暈がするような悦楽のなかで再び昇り詰めた黒子の、余韻にひくつく内壁を更に犯して、もうだめ、と泣いて抱きつく身体を抱きしめて、青峰は黒子の腹へと白濁を散らした。

「あ、あ、あつ…ぃ、せんせ……」
「……だから、おまえは…」

どうしたらその不用意な発言がなくなるのだと、常よりもずっと速い呼吸の下で青峰が苦く笑う。
また犯されたいのかと、唾液の伝う顎を舐めてやりながら背を撫でた。
先ほどまで黒子が腰を預けていた跳び箱の上に腰を下ろし、青峰は膝の上へ抱え上げた黒子が落ち着くのを待った。
外してしまったホックを留めてやり、脱がせたランジェリーを引き寄せて、さて、と惨状に目を向ける。
先ほどまで眩しいほど射し込んでいた夕陽もすっかり陰りを見せて、きっともうすぐ明かりがいる。
こういった倉庫には大抵懐中電灯が備えてあるものだが、それを取りに行くために黒子を離す気にはなれなかった。
幸いにしてジャージを犠牲にしたおかげで跳び箱を汚してはいないけれど、生々しい痕跡の残る床は雑巾を持ってこなければならないだろうし、なにより黒子がこのまま身体を冷やしてしまっては一大事だ。
風邪を引かせようものなら同じく幼い頃から黒子を可愛がっている桃井が黙っていないだろうし、同僚の美術講師である黄瀬もうるさいだろう。
何より、理事まで牛耳る学年主任の赤司の耳に入りでもしたら一巻の終わりである。
職権濫用でシャワー室でも使わせて頂いて、ついでに救護室で少し休ませてやるのもいいかもしれない。
どうせ春休みだ。誰が学校にいるわけでもない。
いたところで、先ほど頭に浮かべた三人を除けば青峰に口出しできる人間の方が少ないのだが。
とりあえずはと頭の中で算段する最中にくたりと青峰にすべてを預けていた黒子が身じろいで、青峰はそちらへと意識を戻した。

「テツ…?大丈夫か」

耳元で吹き込むように声をかけ、汗に濡れた柔らかい髪を梳いた後。
ようやく呼吸の落ち着いた黒子のまぶたに、青峰がふわりと口づける。
平気です、と呟くように答えた黒子は青峰の首筋に頭を擦り寄せ、

「…好きです、先生」

小さく告げた。





→あとがき
別ジャンルで書いた女体化(今はもう公開してません)を下地に青黒で加筆修正。
桃井さん→音楽の先生
黄瀬くん→美術講師(非常勤)
青峰くん→体育教師(バスケ部顧問)
赤司くん→学年主任(僕に逆らう奴は理事でもピー)
緑間くんは生徒会長で紫原くんはテツナちゃんのクラスメイト。
火神くんもテツナちゃんのクラスメイト。テツナちゃんをよく餌付してる。
初めましてこんにちは、はテツナちゃん小学校1年生(6)、青峰くん中学3年生(15)。
告白劇はテツナちゃん中学3年生(15)、青峰くん大学院2年生(24)くらい。
で、このお話はテツナちゃん高校3年生(18)、青峰くん高校教師(27)です。
早生まれの年齢計算を途中で諦めたので間違ってても目瞑ってやってください…。