Pillow talk     08.02.15




あの日から
ボスは少しおかしい。


「…ッぁ゛、うァ、あ――――…ッ」

イタリアへ送還されて、もうどれくらいになるだろうか。
少しばかり自由に動けるようになって以来、ベッドの上じゃ鳴かされる一方だ。
1ヶ月か2ヶ月か、正確な日数など数えちゃいないが、その間一度も繋がってはいない。
今日も気味が悪いほど優しい愛撫で(言ってて鳥肌立ってくる)イけるだけイかされたばかりだ。

「う゛お゛、ぉい…」

元々の回復力が違うのか、傷口の深さでスクアーロが勝っていただけか、ザンザスの回復は思いのほか早かった。
素人目にも全快まで数ヶ月を要するだろうと思われた身体で、ザンザスはわずかに一ヶ月でそこらを歩き回っていた。
監視下に置かれた身で行ける場所など限られているが、それでも見張りの目を盗んでは一人で過ごしていたらしい。
スクアーロが上体を起こせるようになる頃、ザンザスは頻繁に訪れるようになった。

最初の夜だったか。
無言でのしかかってきたザンザスに、今度こそは殺されるかと覚悟をした。
元より捧げると誓った命だ、今更惜しくはなかったけれど。
見下ろす緋を目に焼きつけて、一息の後に目を閉じれば、覚悟に反して降ってきたのは口付けだった。
ボロボロの身体では相手が出来ないと案じたけれど、その心配はいらなかったらしい。
ただこちらの肌をなぞって、ただこちらだけを高めて帰った。
その晩から数えて、もう、両手の数では足りない。

「……あんた、どうしちまったんだぁ…」

イかされるばっかもつれえぞぉ、と半ばからかう音色を含んで問うたけれど、お決まりの拳すら降ってはこない。
わずかに呼吸を乱したままで、濡れた唇を拭う仕草がやけに綺麗だ。

「うるせぇよ」

聞き慣れた台詞もどこか懐かしく耳に届いて、燻る熱が確かにある。
どうかしていると思いながら、スクアーロは唇を苦笑に歪めた。
反して楽しげに口角をつり上げるのは、目の前のザンザスだ。

「だいたいそのザマでくわえられんのか」
「あんたが胸のあたりにでも股がってくれりゃデキんぜぇ?」
「ハ、窒息してぇのか」
「…あんたそんなにデカかったっけかぁ?」
「………そんだけ吠えられりゃ上等だドカスが。」

容赦しねぇ。


笑った顔は獣みたいで、


「なぁ、そっちのが似合うぜぇザンザス」


欲しがる自分も大概だ。


fin.



08.02.15