ただ触れ合ってキスをする。
裸の背に負った誇りを大きな手のひらが繰り返し撫でてくすぐったい。
ふと笑ってしまったけれど、機嫌がいいのか触れる唇は絶え間ない。
春島のぽかぽかした気候、カーテンごしのやわらかい陽射し。
なんとなくやらしい事をするには後ろめたくて、けれどどうにも触れていたくて、
上陸後の打ち合わせをしていたはずがどちらともなくベッドに倒れ込んでこんな具合だ。
どこのガキのじゃれ合いだ、なんて笑われるかもしれない。
それともサッチあたりに見つかれば、うんざりと表情を崩すだろうか。
まあ、どちらでも構わないけれど。
目の前の愛しい人が、ただ過ぎていくこの時間がすべてなのだ。
もうすこしだけ、許してほしい。
「……ったく、いつからこんなに甘ったれになったんだい」
「ん、ふふ、おれのせいじゃないとは思う、んっ」
「どの口が言ってんだい、エース」
鼻先を擦るように突き合わせて、常に触れ合ったままでの言葉遊び。
あと10年経っても敵う気はしないけれど。
それでも、10年先も隣にいたい、とは思う。
未来を願う日が来るだなんて考えたこともなかった。
それも、誰かの隣にいたいだなんて。
告げたら笑うだろうか。怒るだろうか。
どちらにしろ、当たり前だと言ってくれるんだろう。
そう思ったらたまらなくなって、目の前の身体をぎゅうと抱きしめた。
突然のそれにバランスを崩したのか、相手の身体をそのまま受け止める形になって、
ぐえ、と場を読まない声を上げてしまったけれど、文句を言われるより先に、
「マルコ」
ありったけの愛しさを込めて、エースはその名を大切に呼んだ。
fin.
10.05.17〜10.07.08WEB拍手掲載
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