「目は醒めたかトラファルガー」
頭上で鎖がじゃらりと鳴った。
重力に背いて吊るされた腕のおかげで肩が痛い。
薄い闇は案外近い場所で途切れていて、ずいぶん狭いところに閉じ込めてくれたものだと思う。
どうせならどこぞの王族も驚くくれェの部屋用意してみせろよ、なんて馬鹿げた思考に唇を持ち上げる。
そうか。
閉じ込められること自体は嫌がっちゃいねェのか、おれ。変態だな。
「安心しろよ。てめェのクルーにゃ手は出してねェ」
「……そりゃァ、有難いお気遣いをどうも、くそったれ」
やけに身体がだるいのは海楼石のせいだろうか。
自分も能力者のくせに、わざわざそんな手錠を持つとは悪趣味な男だ。
部屋の隅。
赤く揺れる、小さな炎。
その蝋燭が溶けきるまで、おれは正気でいられるだろうか。
きっと無理だな。
目が醒めたと思ったら気に入りの男が目の前にいて、てめェを監禁して見下ろしてやがるんだ。
まるで夢の続きみたいで、興奮しすぎて眩暈がする。
「……勃ってるぜ」
「あァ。興奮しやすいタチなもんで」
「イカレてやがんな」
「てめェもだろ」
ぐ、と顎の下を掴まれた。
そのまま顔を上向けられて、ゆっくりと、けれど確実に気道を狭められる。
吐き出す苦しい息なんか、とっくに男に支配されていた。
あんまり悦すぎて辛いものだから、歯が当たってがちりと鳴る。
知らない血の味がした。
いい男ってのは血の味までおれ好みに出来てんのか。褒めてやるぜ。
唐突に唇が離れる。
足りねェ、と伸ばした舌の上に乗せた言葉は綺麗に無視された。いい根性してやがる。
性急、というよりかは乱暴な手が脚を割り開いた。
昼なんだか夜なんだか、どこだか分からない場所でも男はお構いなしに盛れるらしい。
「ハジメテは天蓋付きのベッドがいいんだけど」
「抜かせ。そんなお上品な柄かよ」
どうせてめェはおれがいりゃそれでいいんだろ。
吐息が触れるほど近く。
囁かれる言葉は甘い毒を含んでいる。
……ああ、やられた。
ごめん、さっきの取り消す、ユースタス屋。
おまえがいるならどこだって豪華な牢獄だ。
fin.
09.05.15〜09.07.20WEB拍手掲載
title:wista
だらだらと独り言ローさんでした。この時点でキッド→←←ロー。
シチュエーションとしてはふらふら歩いてたローさんをキッドの頭が山賊よろしく掻っ攫ってきて船底あたりの倉庫にでも閉じ込めた感じでよろしくお願いします。
「なんとなく美味そうだなァ」だったのがやみつきになるといいです二人とも。