「――…ベル?」
「ん?」
寝ていると思っていたスクアーロの声。
ベッドライトを淡く灯して珍しく読書をしていたベルフェゴールに、それは不意打ちだった。
(蝋燭なんか使わないよ、だってオレ王子だもん)
「なに、眩しい?」
「――…いや…」
薄目を開けて、一度はベルフェゴールの方へ体を向けたのに、また、向こう側の壁を向いて横になってしまった。
眩しくて目が醒めたのかと思えば、そうではないらしい。
「スクアーロ?」
「……な…んでも、ねぇ」
歯切れの悪い答えに少しばかり苛ついて、それからふと見遣った、彼の指先。
きゅう、と布団の端を握って、なにかを堪える様子。
ああ、と。
ようやくこのアホ鮫が目を醒ました理由を悟って。
「――…オレも寝る」
「…」
「こっち向けよ」
なにヤセ我慢してんだよ、アホ鮫のくせに。
「スク」
「……クソヤロー…」
「うしし」
悪態をつきながら、それでもころりと体を反転させて。
もぞもぞと擦り寄ってくるのが、図体に反してガキっぽい。
「布団全部持ってくなよ」
「う゛お゛ぉい、そんな寝相悪くねぇぞぉ」
「はぁ?オレ起きたら布団はがされてたことあんだけど」
「…………知らねぇー」
むす、とした表情が、眠そうにとろんと緩む。
「電気消すから」
「ん゛」
ぱち、と軽い音がして、暗闇に包まれた。
そんな、中で。
「手」
「は?」
「手、出せよ」
「…?」
にょき、と布団から出てきたそれの気配を感じて、自分の指を絡ませた。
「おい、ベル…」
「いーから」
「……ッ、なにが…」
「王子の言うことは黙って聞けよ」
「……………クソッ」
はぁ、と溜息をついてても。
きゅ、と絡んでくる体温が。
…おまえさ。
昔っから思ってたけど、考えてること全部顔に出てんの、いい加減気づけよ。
「ねー、バカスク」
こうして手でも繋いでれば、
おまえも怖い夢なんか見なくて済むだろ。
fin.
06.11.11 06.12.03掲載
前のジャンルの焼き直しでしたすみません。