「あ………ァ、」

自分の唾液に濡れた指で、入り口を拡げられる。
ザンザスは関節までを飲み込ませて幾度が動かした後、ゆっくりと体内へ埋め込んだ。

「ン…!」

びくりと目を瞑ってそれに耐え、スクアーロがそろとザンザスの熱を取り出す。
五指を絡めてゆっくりと動かし出すのに、ザンザスは目を細めて鎖骨に吸いついた。
ァ、と小さく声を上げて、スクアーロがくと顎を上げる。
その顎の先にも噛み付いて、ザンザスもまたゆっくりと指を動かした。


「っく…ァ、あぅ、ザン…」

体内を動く指が3本になるころ、スクアーロはすっかり力を抜いてザンザスの肩に頭を預けていた。
動きを止めた右手には、屹立したザンザスの熱。

「なんだ、もう終わりか?」

だらしがねぇな、と揶揄する声が聞こえて、けれどそれに反論も出来ない。

「も……ぅ、」

欲しいのだと言葉には出来ないまま、ザンザスの首筋にゆるりと歯を立てる。
かしかしと何度か噛み付くそぶりを見せると、ザンザスがようやく体内から指を抜き去った。

「ぁ……」

抜かれたそこが物欲しげにひくりと喘いで、ザンザスに顔を上げるよう促される。
従ってゆるゆると顔を上げれば、真っ直ぐにこちらを見上げる紅い瞳と視線が交わって、
唇の端にひとつなだめるようなキスをされた。

「腰、落とせ」

ぴたりと自分と違う熱をそこに感じて、スクアーロが息を飲む。
それを腹から吐き出しながら、ゆっくりとザンザスの熱を受け入れ始めた。

「はっ………ァ、あ、ザン…っ」

ぐぐ、と慣らしてなおきついそこを拡げられて、思わずスクアーロが逃げ腰になる。
それをザンザスの手が押し留めて、ゆっくりと時間をかけて根元まで飲み込ませた。

「ん゛っ……、ァ!」

ザンザスの肩にしがみついて、最奥までいきついた衝撃にスクアーロが喘ぐ。
脇腹を撫でさすってスクアーロが落ち着くまで待つと、動けるか、とザンザスが耳に囁いた。
問われて、数瞬おいた後、こくりと頷いて応える。

「ふ…っ、ぅ、あ゛・ッァ!」

ゆっくりと腰を引いて、再び、押し付けるようにしてザンザスを迎える。
目の前で揺れる白い身体を、ザンザスが満足そうに眺めやった。
汗に濡れたこめかみから手を差し入れて、髪をかきあげてやる。
薄っすらと瞳を開ければ、常になく穏やかな瞳をしたザンザスがそこにいた。

「あっ、ザン…!」

その目に見つめられるのに耐えられなくて、スクアーロが俯く。
見越したようにザンザスが下から突き上げて、
自分のタイミングとはわざと外されたそれに、スクアーロが高く鳴いて仰け反った。
そうして晒された胸元へ、ザンザスが唇を寄せる。
頂を歯でひっかけて、舌で転がして吸い上げる。
それで感じるように教えたのは、他でもないザンザスだ。
弱いそこへ与えられた刺激に、頬を伝う涙がとめどなく溢れ始める。
見上げて、顎先まで伝ったそれをひとつ舐め、

「―――…上出来だ」

あとは、感じていろ。
言うが早いか、ザンザスが背を抱いてスクアーロをシーツへ押し倒す。
突然変えられた体位に、体内の熱に内壁の弱いところを抉られて、スクアーロがまた泣いた。

「スクアーロ」
「あ、あっ、ザンザスッ―――…」

後は強い律動に揺さぶられて、白い光を追うばかり。


* * *


キングサイズのベッドに寝転がったまま、スクアーロはうだうだと枕にじゃれついていた。
少しの間落ちてしまっていたようだが、その間に後処理をしてくれたのか、身体に不快感はない。
耳には、シャワーの音が聞こえていた。

「お、」

唐突にその音が止んで、バスルームのドアが開く音。
視線を向ければ、珍しいローブ姿で、ザンザスがタオルを片手に頭髪を拭っているところだった。
スクアーロの意識があることに気づいたのか、
ザンザスがペリエを二本とヴィーノを一本手にしてベッドの側へと歩み寄ってくる。

「さんきゅなぁ、ボス」

ペリエを受け取って、ザンザスが腰掛ける脇へ半身を起こした。
渇いた喉を刺激していく炭酸が心地良い。
ザンザスも同じようにペリエを開けて、ぐびと二口ばかり飲んだ後、
栓を開けたままベッドサイドの机へ置いた。
代わりに開けるのが、ヴィーノの栓だ。
まさかそのまま飲む気かとペリエの瓶口を唇に引っ掛けたまま見上げると、
思ったとおりにザンザスがそのまま呷り出した。

「…う゛お゛ぉい、あんたなぁ……」

いくら酒に強いとは言っても、それはあんまりじゃないのか。
続けるが、ザンザスがそれを気に留める様子はまるでない。
はぁ、と息をつくと、ふいに己の前に影が落ちた。

「ボ…ッ」

見上げればザンザスが目の前で、有無を言わさず口づけられる。
そしてそのまま、割った唇の間からヴィーノを流し込まれた。

「ん……、ッン」

されるままに飲み込んで、溢れたそれは顎を伝ってシーツへ落ちていった。
離れていく唇は、一度顎から唇の端までを舐めて、もう一度触れるだけのキスを唇に落とす。
それをゆっくりと見送って、スクアーロは雫の行方を辿った。



「……あーあ、落ちねぇぞぉ、これ」

見下ろしながら言えば、

「買い換えればいいだけのことだ」

さすがは御曹司様といった回答。
このシーツ一枚で一体なにがどれだけ買えると思ってやがるんだ。
口には出さずに、そう思う。

「スクアーロ」
呼ばれて上を向くと、唇を啄ばまれる。
いつのまにかザンザスが手にしていたヴィーノは机に置かれ、スクアーロが手にしていたペリエもいまはザンザスの手の中だ。
栓をして、ベッドの端へ無造作に投げられてしまう。

「ボス…」

呼べば、またふさがれる唇。どこか甘えているようで、少しおかしかった。
笑った吐息が知られたのだろうか、唇を離したザンザスがスクアーロの鼻を摘む。
ふが、と情けない声を上げるその前で、ザンザスがローブの紐を解いた。
同時に、スクアーロが包まっていたシーツも剥ぎ取られる。
ふるふると首を振ってザンザスの指から逃れると、

「う゛お゛ぉい、またヤんのかぁ!」

少々焦りを滲ませた声で、スクアーロが言う。
ローブを肩から外しながらスクアーロをシーツへ縫いとめて、


「今日は恋人の日なんだろう?」
「な゛……っ」
「照れてんじゃねえよ、ragazza」
「照れてねええぇ!!!」


だいたいオレは女じゃねぇ!とうるさくわめく口をふさいで、


「黙ってりゃいい思いさせてやる」


ザンザスが凶悪に笑うのを、スクアーロは絶望に似た思いで見上げた。


fin.


07.03.18 08.02.19 掲載 07春コミにて無配。 << Back