― Pillow talk ― あの日から ボスは少しおかしい。 「…ッぁ゛、うァ、あ――――…ッ」 イタリアへ送還されて、もうどれくらいになるだろうか。 少しばかり自由に動けるようになって以来、ベッドの上じゃ鳴かされる一方だ。 1ヶ月か2ヶ月か、正確な日数など数えちゃいないが、その間一度も繋がってはいない。 今日も気味が悪いほど優しい愛撫で(言ってて鳥肌立ってくる)イけるだけイかされたばかりだ。 「う゛お゛、ぉい…」 元々の回復力が違うのか、傷口の深さでスクアーロが勝っていただけか、ザンザスの回復は思いのほか早かった。 素人目にも全快まで数ヶ月を要するだろうと思われた身体で、ザンザスはわずかに一ヶ月でそこらを歩き回っていた。 監視下に置かれた身で行ける場所など限られているが、それでも見張りの目を盗んでは一人で過ごしていたらしい。 スクアーロが上体を起こせるようになる頃、ザンザスは頻繁に訪れるようになった。 最初の夜だったか。 無言でのしかかってきたザンザスに、今度こそは殺されるかと覚悟をした。 元より捧げると誓った命だ、今更惜しくはなかったけれど。 見下ろす緋を目に焼きつけて、一息の後に目を閉じれば、覚悟に反して降ってきたのは口付けだった。 ボロボロの身体では相手が出来ないと案じたけれど、その心配はいらなかったらしい。 ただこちらの肌をなぞって、ただこちらだけを高めて帰った。 その晩から数えて、もう、両手の数では足りない。 「……あんた、どうしちまったんだぁ…」 イかされるばっかもつれえぞぉ、と半ばからかう音色を含んで問うたけれど、お決まりの拳すら降ってはこない。 わずかに呼吸を乱したままで、濡れた唇を拭う仕草がやけに綺麗だ。 「うるせぇよ」 聞き慣れた台詞もどこか懐かしく耳に届いて、燻る熱が確かにある。 どうかしていると思いながら、スクアーロは唇を苦笑に歪めた。 反して楽しげに口角をつり上げるのは、目の前のザンザスだ。 「だいたいそのザマでくわえられんのか」 「あんたが胸のあたりにでも股がってくれりゃデキんぜぇ?」 「ハ、窒息してぇのか」 「…あんたそんなにデカかったっけかぁ?」 「………そんだけ吠えられりゃ上等だドカスが。」 容赦しねぇ。 笑った顔は獣みたいで、 「なぁ、そっちのが似合うぜぇザンザス」 欲しがる自分も大概だ。 fin.
08.02.15 << Back