― ヴァンパイア ― 抜け出せない 離れられない ドラッグよりもタチの悪い、関係。 「は…っん、あ゛ぁッ…」 「…スクアーロ」 「ぅあ、あ゛っ、…ッぁ!」 揺さぶられる 霞む視界の中、鮮やかなのはそいつの色彩。 曇らない紅。 届かない、紅。 偽りの愛さえも存在しない 甘い睦言なんかひとつもない 体を重ね合うだけの、虚しい関係。 …もちかけたのは、オレの方。 認めたくなかった こいつに惹かれたなんて、そんな感情は、そんな感情の名前は知らなくて良かった。 けれどいつか いつのまにか溢れ出した感情は止まらずに 気がつけばせがんで、繋がって。 体だけで、それだけで。 「…上、乗れ」 「ん…っ、ん、ボス…」 引き寄せられた身体 わざと、あんたの胸に爪を立てた。 突き立てる牙も、引き裂けるほどの爪も持たない 刻めるのは、小さな、小さな傷痕。 「っうぁ…あ゛、んぅ…っ」 「…ッつ…、爪立てんじゃねえよ」 「あ゛っ、あぅ、ザン…ッ」 「…は、聞こえてねぇか。」 目の前のそいつの口元が、満足そうに歪められて 見遣るオレは、たぶん滑稽なほど興奮してる。 神様なんてもんがもしもどこかにいるんなら、ブチ殺してやりたいほど残酷だ。 (呼ぶな) (呼ぶなよ) その声の毒が身体を廻って、思考を侵して 甘い嘘を、また無様に信じてしまう。 「スクアーロ」 「あ、ボス…っ…!」 「 」 「――…っあ…――!」 届かない 伝わらない そんな想いなら欲しくない 何もいらないから、ただ (オレは、てめぇが) 薄れる意識の狭間 見えた、その胸にうっすらと、赤い、 (―――…消えんなよ) その胸の傷が、消えなきゃいい。 fin.
06.11.11 06.12.03掲載 ボス←スク。 << Back