― 眠れよ子羊 ― ああ、この男。 どうやって殺してやろう。 組み敷かれながら、スペルビ・スクアーロはこめかみを引きつらせた。 「う゛お゛ぉい、何考えてんだぁボス」 「うるせえよ」 「褒美くれるっつったのはボスだろうがぁ」 「だから、くれてやるって言ってんだろ」 う゛お゛ぉいふざけんなぁ! てめぇに組み敷かれることのどこが褒美だってんだ ああ畜生機嫌がいいと思ったらそういうことか覚えてやがれクソボスがぁ!! 腹のなかで悪口雑言並べ立てるスクアーロの、脱がしやすいとは到底言えないその衣服を乱暴にはぎ取っていく。 彼―――…ザンザスがこうしてスクアーロを組み敷くのは、何もこれが初めてではなかった。 男ばかりの暗殺部隊、長期の任務にでもつけば、そう簡単に遊びにいけるわけではない。 かといって、女を同行させるわけにもいかない。 結果論として、こんな不毛な関係が生まれたわけだ。 運が良いのか悪いのか、ヴァリアーのボス、ザンザスが相手として選んだのがスクアーロだった。 任務を終えて、久々のイタリア。 褒美をやるからついてこい、というザンザスの言葉を、スクアーロは素直に受けとってしまったのだ。 ザンザスの口元が歪んだことに、気づいたのはマーモンだけだった。 「…ッ…く、ボス…っ…」 指先に胸の突起をあそばれて、押し殺した声が漏れる。 首筋には衣服を乱さぬ彼の羽根飾りが当たってくすぐったい。 けれどいまはそれさえも別の感覚に変わる気がして、スクアーロは頭を振った。 「あ゛…ッあ…!」 「もうこんなにしてんのか、クズが」 「ぅあッ、あ、ボス…ッ」 すでに兆し始めた脚の間を、ぐり、と膝でいじられる。 途端背を反らせるスクアーロの表情を、ザンザスは嘲笑の仮面で楽しんだ。 「ん…っ…ボ、ス……んぐっ」 「なめろ」 「ん…っ…」 片手でベルトを抜き取りながら、ザンザスはスクアーロの口に指を突っ込む。 喉まで達するそれを押し返そうとするものの、かなわずに大人しく舌を這わせた。 濡らさなければそのまま突っ込まれて、自分が痛い思いをするだけだ。 従順なスクアーロの態度に、ザンザスは満足気に唇を歪めた。 そのまま胸のとがりを舌でいたぶって、あらわな下腹に指を這わす。 直接的なその刺激に、スクアーロはびくびくと震えた。 先走りに濡れた先端に爪をたてられ、きつく扱かれる。 乱暴なその愛撫にも、スクアーロの身体は敏感に反応した。 そう仕込んだのは、他でもなくザンザスなのだが。 「ン!ん゛ん……っ…ぁ……!」 ちゅぷ、と音をたてて、口内を荒らしていたザンザスの指が引き抜かれる。 目元を赤く染め、息を乱したスクアーロは、ねだるような瞳でザンザスを見遣る。 「スクアーロ」 「っあ、ボス…っ…」 「…次、わかってんだろ」 「んっ…」 ザンザスの言葉にわずかにうなずくと、スクアーロは四つん這いになってザンザスのベルトに手を伸ばした。 震える手でそれを抜き取ると、口でジッパーを下げる。 ぐ、とザンザスの自身を取り出して、躊躇うことなく口に含んだ。 「ん…」 必死に舌を這わせるスクアーロの、流れる銀髪に指を通す。 絡まることのない感触を楽しみながら、上下する頭を押さえつけた。 「ふ…っ…ぅ……」 喉奥に突き入れられて、スクアーロは苦しそうにザンザスを見上げる。 潤んだ瞳を見下ろして、ザンザスは顎で続きを促した。 再び目を伏せて舌を這わせ、スクアーロは器用に唇で扱き上げていく。 その様子を確認して、ザンザスはゆるりと指を忍ばせた。 「んッ!ん・ん――――〜〜…っ!」 「暴れんな」 「んっ…ふ、ふっ…ん゛ぅっ」 ぐちゅりと嫌な音を立てて、ザンザスの濡れた指がスクアーロの蕾に突き立てられた。 腰をひねって逃げようとしても、ザンザスの指は容赦なく奥へと潜り込んでくる。 乱暴に内部を拡げられ、ぐり、としこりを押し上げられて、スクアーロは耐え切れずに白濁を吐き出した。 気付いて、ザンザスは指に絡ませた銀の髪を力任せに引き上げる。 「っぐ……ボ、ス…っ…」 「勝手にイッてんじゃねえ」 「っ……も、ボスっ…っく…」 痛みに顔をしかめながら、息を荒げて欲しいとねだる。 唇を汚して、ひどく扇情的な姿で。 ク、と口角を上げると、ザンザスはスクアーロの身体を反転させて押し倒した。 「っう…ボスっ……」 ベッドに頭を押し付けて、首だけでザンザスを振り返る。 「スクアーロ」 「…っ…」 「約束通り、褒美だ」 「っぁ゛・あ―――…ッ!」 後ろから押し入る熱に、スクアーロは目を瞑った。 おざなりに慣らされたそこをなかば無理やりに拡げられ、けれど痛みよりも悦楽が先に立つ。 腰をつかまれ、乱暴に突き上げられ、 あ゛ぁ畜生なんだってボスはいつもいつも乱暴なんだ ちったぁオレの身体のことくらい考えてくれよ任務に就くのつれぇんだ あ゛――くそそれが何で気持ちいいなんて思っちまうんだよオレの身体はぁ!! まとまらなくなった思考をどこかに放棄して、 スクアーロは与えられる「褒美」につかのま溺れることにした。 「…ボス、よぉ…っ」 「なんだ」 「てめぇの辞書に手加減って言葉はねぇのかぁっ…!?」 「てめぇにそんなもん必要あるか」 散々に貪られベッドに伏すスクアーロに、ザンザスは冷ややかな言葉を投げかけた。 恨めしげに睨み上げても、見下ろす視線にはかなわない。 好き勝手吐き出してくれたおかげで、内部が飲み込みきれなかったザンザスの残滓が緩く脚を伝っていく。 彼が何度達して、自分が何度イかされたかなど覚えていない。 ただ終わる頃には意識が朦朧として、もう出ねぇって情けなく泣いたくらいだ。 これだけ好きに荒らしてくれて、それで涼しい顔して任務を言いつけやがる。慣れたもんだ。 後始末もめんどくせぇ、風呂に入るのもめんどくせぇ、かといってこのまま寝てしまえば 明日の朝にはとんでもないことになる、あ゛ぁでもいまは眠ィんだ、とスクアーロがぐるぐる思考していると、 「スクアーロ」 「う゛お゛ぉい今度はなんだって……」 ボスの顔が、目の前に。 唇に、触れたのは… 「な…っ…あっ…」 「6時間後に出かける。てめぇもついてこい」 涼しげに告げて、ザンザスはバスルームへと消えていく。 残されたスクアーロは、あまりの出来事に口をぱくぱくさせていた。 なななななななんだぁ!? いま何をされたんだぁ、オレぁ!!!? 触れたのは、温もり。 ただしこれまでに、一度も触れることのなかった場所。 身体を重ねるだけの、欲を吐き出すだけのこの関係で、唇を重ねることなど終ぞなかった。 そのはず、なのに―――… 「ッあ゛―――…くそ…」 畜生が、忌々しい。 あいつにとっては戯れに過ぎない、それでもその唇が嬉しかった、なんて。 「認めてたまるか…ッ」 堂々巡りな思考に終止符。 めんどくせぇ、このまま寝てやる。 耳まで赤くして唸って、シーツをばさりと被るのだった。 fin.
06.06.28 << Back