― 眠りによせて ―






穏やかな光
柔らかな感触
名前を呼ぶ声

心地が良くて、目をあけた。


「起こしたか」
「ん、起きた」

穏やかな光は冬の陽射し
柔らかな感触は髪を梳くあんたの指
名前を呼ぶのも、起き抜けのかすれたあんたの声。
応えれば、ふと目元を和らげて。
滅多に見せない、あんまり柔らかな表情だったから、思わず目を泳がせた。

「なに、キョドってんだ」
「だって」

リボーン、おまえ、いま自分がどんな顔してるかわかってないだろ。

「顔赤ぇぞ」
「うるさい」
からかうように笑われて、布団の中に潜り込む。
その上から、また笑う声が降ってきて。
文句の代わりに、ぽすりと足を蹴ってやった。
「痛ぇよ、アホ牛」
「自業自得」
そんなに強く蹴ってないし。
もそもそと布団の中から憎まれ口を叩いてやれば、
「ランボ」
「ちょ、……ッン…」
ぐい、と。
大きな手に布団ごと引きずりあげられて、思わず上を向いた途端に唇を塞がれた。

「ん、ん……っ…」

微睡んだ頭はとっさのことに反応できず。
絡め取られた舌と、酸素の回らない頭がじんと痺れて、
抱きしめられた背がびくりと震えた。
これ以上はまずい、と、肩口を叩いて「苦しい」のサイン。
名残惜しげに啄ばんでから、ゆっくりと唇が離れる。
「…は、朝、っから…!」
「おまえが悪ィんだ」
く、と笑ったリボーンが、布団を直して二度寝の体勢。
「…なに、寝んの?」
「久々にゆっくりできるからな。おまえは?」
「……寝る。」
「ん。」
満足そうに、抱き寄せられる体。
包む腕が、その胸が、オレよりも年下のくせにオレよりも力強くて広くて少し気に入らない。
けれど、指先で髪を遊ばせる、その仕草が甘えていて。
やけにくすぐったくて、笑えた。

「…なに、笑ってんだ」
「なんでもないよ」
「言え、コラ」
「やだってば。寝るんだろ?」

おやすみ、と胸元に頭を寄せれば、諦めたような溜息が聞こえた。

「起きたら鳴かすぞ、てめぇ」

降ってきた脅し文句に苦笑い。
先に起きて綱吉のところへ避難しよう、と決意するところへ、

「おやすみ」

ぐ、と抱き締めてくれたものだから。
起きた後の思考は放棄して、柔らかな夢に意識を沈めた。

fin.


06.11.11 06.12.03 掲載 糖分過多。 << Back