― Stay by my side ―






気がつけばいつもそこにいた。
あいつはバーで出逢ったなんて言ってるが、あいにくオレは覚えていない。
幼い頃から毎日のように挑んできて、ボロボロになることに飽きはしないのかと問いかけたくなるほどだった。

それでも毎日。
いつもいつも、そこにいた。

5年が過ぎ、10年が過ぎ、15年が経った今でさえ、あいつはオレのそばにいる。

昔のように命を狙うことはなくなったが、相変わらずトラブルメイカーの要素を持っている。
あの容貌にあの身体だ、男も女も放っておくはずがない。
それでもあいつは、ずっとオレのそばにいる。
そんなあいつに向かっている、自分の感情がなんなのかはわからない。
まだわからないまま、わからないふりをしているままでいい。
この感情を言葉にするのは、まだあいつには勿体ない。
もっと、オレを求めてくればいい。

知らず知らず、唇が笑みに歪んだ。
オレもずいぶん、幼稚なままだ。

窓の外、揺れる緑がやわらかい。
陽射しも穏やかで、風も優しい。
こんな日は、あいつと出かけてみるのも悪くない。

そこまで考えが及んだところで、ドアの向こうから近づいてくる、慣れ親しんだ気配にリボーンは気付いた。
昔から変わらぬ彼の悪い癖だ。
仮にもヒットマンだというのに、己の気配を消しもしない。
相手が自分だから、なのかもしれないが。
いくら同盟ファミリーとはいえ、こうも気安くボンゴレの屋敷へ入ってこれるのは、彼だけが為せる業かもしれない。

気配はリボーンの部屋の前で止まり、コンコンと軽いノックがある。
彼がドアを開ける前に、リボーンはドアを開けてやった。

「わ、……と、リボーン!いるなら返事くらいしてよ」
「返事がなかったら勝手にドア開けんのか、おまえ」
「ツナさんが部屋にいなかったら入って待ってればいいって」
「あの野郎…」

ダメツナめ。
いつまで経っても警戒心の薄い奴だ。

「ね、リボーン」
「あ?」
「散歩行こうよ、誘いに来たんだ」

満面の笑みで、ランボが手を差し出す。
一瞬、リボーンは呆気に取られた。
まさか、とは思ったが、よくよく考えればこの遊び好きな男が、こんな絶好の日和を放っておくはずはなかったのだ。
自分が同じ思考をしていたことに、リボーンは苦笑する。
その苦笑の意味を知らないランボが、手を引きかけるも。
リボーンはその手を追いかけて、ぐい、と自分の方へと抱き寄せた。

「リボ…ッ!?」
「アホ牛」
「な…っ」
「そこにいろよ」

おまえは。
変わらないままで、そこに。

「そこにいろ」

リボーンの言う意味が、行動の意味が、ランボさんには理解できなかったけれど。
なんだか大切なことのような気がして、感じる体温が温かくて、目を閉じて頷いた。

「で、どこ行きてぇんだ、アホ牛」
「ッもぅ!」

相も変わらぬぞんざいな言い方に、言い返してやろうかと思ったけれど。
珍しくリボーンがやわらかい表情をしていたものだから、ランボは文句の代わりにキスをした。

fin.


06.06.09 << Back