<退屈しのぎにご覧遊ばせ 08.11.02>
REBORN!
ベル独り言
ベルマモ+ザンスク





鍵穴ごしに覗く光景、なんてものは実在しない。
いくら古めかしい造りの邸とはいってもバカでかい鍵穴があるわけじゃないし。
グラスが集音機になってくれるほど薄い壁のはずもない。
まあ、望む望まざるにかかわらず、勝手に目に入ってくるし聞こえてくるから、別に惜しくはないんだけど。
ちょっと興味があっただけなんだよ、しし。



最初に聞こえたのは破壊音。
ガラスが派手に割れる音と、大きな物が倒れる音。
重い物が落ちる音も続いたから、本棚でも倒したんだろ。
スクアーロの任務が長引いてるのは知ってた。
標的を殺り損なった部下(は、俺が殺った)の尻拭いとかで、アイルランドの北のはずれまで飛ばされたなんて言うからとんだ笑い話だ。
雪だるまにでもなってこいよ。
そう言って見送ったのはもう二週間は前になる。

その間、ボスの眉間には皺が増えていく一方で、厨房担当は酒の仕入れが間に合わないって嘆いてた。
ルッスが一度ボスの部屋に行ってなだめたらしいけど、あんまり機嫌が良くなることもなく。
ムッツリは殴られたらしい頬を大事そうに手で覆って戻ってきたから、ここ一週間くらい無視してる。
美しくないMとか王子むり。しし。

スクアーロ、は、綺麗だと思う。
黙ってりゃ宮廷にいてもおかしくないくらい、見た目だけは綺麗だと思う。
ボスは綺麗な物が好き、だけど綺麗な物を壊すのも好きらしいから手に負えない。
ボスとは趣味が違うからさ、さすがに鼻血までは愛せねーよスクアーロ。

隔てるのは扉2枚。
の、割には聞こえた音が近かった。
なんだよ夜中に廊下に放り出されるとかどんだけ可哀想なんすか先輩。
と、思ったら聞こえる声はふたつ。がなり合う相手は紛れもなくボスだった。
………ねぇまじどーなってんの、この組織。
いま3時だよ。夜中の3時だよ。いい子な隊員はみんなベッドに入ってるんだってば。安眠妨害甚だしいよ。
王子久々のオフなんだけど。一日なんにもしなくていい、素敵な一日の夜明けがもうすぐそこまで来てる時間なんだけど。
あーもー痴話喧嘩とかいい加減にしろよ。

なんでこんな遅くなったって、そりゃボスが情報のひとつもやらずにスクアーロ追い出したからじゃん。
あーあーだめだよ先輩ボスに正論で反論したって聞いてくれないよ。
ほらまた殴られた。床に倒れる音がゴツッとかさぁ、ドサッじゃないあたりボスも容赦ないよな、しし。
ゴリゴリってなんの音だよ。人体が立てていい音じゃないっての。
ボスもさぁ、素直じゃねーよなぁ。
ちょっと淋しかったんだって、一言言ってやりゃいいだけなのに。
……そんなボス気持ち悪いか。しし。

あ、静かになった。
とうとう先輩くたばったかな。それとも


「ッァ………!」


え。


「ちょ、ッ……ン…」


なに。


「う゛、ぉ゛い、ザン……ッ、や……!」


うわ。
うわわ。
何この声。誰。いや誰かってそんなの決まってるけど。
何考えてんだよまじで。まじでまじでまじで。ほんとに。

廊下でおっ始めるとかさ、変態もほどほどにしてくださいよ先輩!

ボスだって品性疑っちゃうよ。つーかそんなキャラしてたっけ?
やーばいってまじで。ぶったまげ。
ムッツリなんか今頃歯ぎしりしてそうだし、ルッスは録音の準備とかしてそう。
廊下って声響くんだっつの。だいたいいま深夜だし。周りちょー静かだし。
あ゛あ゛ぁ勿体ねー、なんで暗視カメラとか付いてねーのこの邸!
いまの廊下の映像とかさぁ、録画して売り捌いたら(うちの下っ端どもとかに)いい稼ぎになりそうなんだけど。
うしし、王子ちょっと愉しくなってきた。
ああでもこういうのはマーモンの方が得意なんだよなー、教育にはよろしくないけどさ。
ちょっとお子様には刺激強いよな。なー、マーモ……

「………ベル」
「あれ、起きてたんだマーモン?早く寝直しなよ、聞かなくていいもん聞こえ「顔。ニヤけてる」……。」


ヘンタイ。


抑揚のない小さな声。
ぷいとそっぽを向いた小さな頭。
ついでにフードの上のカエルにまで背を向けられた。


………………。


やべ、王子ちょっと泣きそう。

fin.


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