<いちゃつくんなら他所でお願い 08.08.20> REBORN! XANXUS×スクアーロ+ルッスーリア 「ッてぇんだよいい加減によぉ!」 芝生に寝転がって夢の世界を楽しんでいたところへ、邪魔しに現れたのはいつもの御曹司だ。 ボンゴレの御曹司ともあれば彼も暇ではないだろうに、よく頻繁にからかいに来る時間があるものだ。 毎度ながら、丁寧に護衛も撒いてくる。 スラムで拾われて早1ヶ月。 暗殺部隊とやらの空気にもそろそろ慣れてきたところだ。 いくら御曹司の(気まぐれによる)推薦とはいえ、立場的には下っ端でしかないスクアーロに与えられる任務などたかが知れたもので、 暇を持て余しては中庭で惰眠を貪っていた。 今日もそんな時間を過ごしていたのだが、ゴツゴツと頭を蹴られて妨げられた。 それでも無視を通していたのだが、最終的には踏みつけられるに至って飛び起きたのだ。 睨み上げれば、唇を愉しげに歪めた緋色の双眸がこちらを見下ろしていた。 「仮にも暗殺者が、こんな場所で寝てんじゃねぇよ」 「うるせぇー。人の気配に気付かねぇほど馬鹿じゃねぇぞぉ」 「は。なら、俺が居るのも分かってたろうが。なんで起きねぇ」 「あんたの相手が面倒臭ぇからだぁ!」 身も蓋もない、という言葉をどこかで習ったが、正にといった体の台詞で返す。 その悪態すら愉しそうに、ザンザスは目を細めた。 「無視すりゃ痛ぇ目見るだけだろうが」 「気持ちよく寝させてやろうって思いやりはねぇのか!」 「マフィアにそんなもん必要ねぇ」 「こっのクソ御曹司……!!」 ザンザスが他愛ない言葉遊びを愉しんでいるのは、傍目からは必要がないほどよく分かるのだが。 当人同士はこうも気がつかないものだろうか。 ザンザスから遅れること五分、撒かれたのだと泣きついてきた部下を宥めて代わりに捜しにきたルッスーリアは、 案の定といった光景に目を細めた。 何かを欲しがることなどなかった主が、初めて欲したのが彼だった。 素性も知れない少年を、ただ気に入ったからヴァリアーに入隊させるのだと聞いたときには驚いたが、 今となっては間違っていなかったのだと思える。 実際スクアーロは強かったし、周りに馴染みはしなくとも己の役割を理解していた。 何より、その存在があってよかったと思うのは。 「まったく…あんな顔、見たことないわ」 年相応、とでも言おうか。 ルッスーリアが仕えている間、それほど長い期間ではないが、あんな表情を見せることは一度もなかった。 自分よりもずいぶん年若い彼でいて、感じる威圧は支配者のそれだった。 故に、隙のひとつも見受けられなかったのだが。 「スクアーロもスクアーロね。気配は分かる、なんて言って、私に気づいてる様子ないじゃない」 冷ややかに揶揄する声と、むきになって反論する声が風に乗って届く。 まだまだ終わりそうにないその様子に、 「ほんと、いちゃつくんなら他所でやってほしいわ」 ここ、一応暗殺部隊のアジトなんだけど。 溜め息混じりに呟いて、ルッスーリアは口元を緩めた。 fin.
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