※現パロ
Criminal ★ Marco 〜痴漢編〜

色モノ注意
展開が早いのは仕様です。





ねとり、絡みつくような視線を感じ始めたのはいつのことだろう。
初めは気のせいだと思っていた。
電車に乗るのはいつもラッシュアワー、周りには派手な化粧の香水臭い女も露出の多い女も、
それこそまだランドセルにカバーを付けたような女の子だって立っていた。
きっと視線はそちらに刺さっているのだろう、不埒な輩だと思っていたのだが。
やはり自分に向けられていたのだと、ここ二、三日、電車の降り際に腰を這うようになった男の手に、エースは溜息を隠せなかった。


最後尾車両、開かない側のドアに、外を向いて張りつくように立ったのはもちろんわざとだ。
周りには半分眠りながら吊革を掴む冴えないサラリーマン、散々遊んだ帰りだろう、外に漏れるような音量でウォークマンを聞きながら他人に体重を預ける青年、
携帯のデジタル表示と睨めっこしながら停車駅を確認する中学生くらいの子供。
さすがに終電の近いこの時間、普通車両に乗っている女性は少ないし、わざわざこんな痴漢しやすい場所を選んで乗ってくる物好きもいない。
せっかくお膳立てしてやったのだ、誘いに乗ってきたならその場で現行犯逮捕してやろうと、警察官一年目のエースはメラメラと闘志を燃やしていた。


がたん、ごとん。
眠気を誘ってくれる揺れと、どこまで行ってもひたすら暗い外の風景にだんだんと瞼が下りてくる。
ぎゅうぎゅうときつい満員電車は相変わらずで、冬だというのに暑苦しい。
酒の臭いに煙草の臭い、汗や香水。空調の埃臭さ、誰かが持ち込んだファストフードの油っぽい匂い――……
最近はあまり睡眠を取れていなかったから、立ちくらみを起こしそうだ。
眠気と相まって、ふらり、後ろへ倒れかける。
ああ、まずい。
そう脚を踏ん張ろうとしたところで、後ろに立っていた男がとすりと背を支えてくれた。

「あ、すみませ―――……っ!?」

支えてくれた、と、そう思った手が、エースの腹の方へ回る。
そのままするりと胸を撫でた手に、エースはざっと血の気が引く思いをした。
あんなに耐え難かった眠気が、いつのまにやら霧散している。
振り返ろうにも、後ろから抱え込むように回された男の腕のせいでままならない。
エースとて背が低いわけではないのに、こうもすっぽりと抱き込まれてしまうとは。
ち、と舌打ちをひとつ、前を向けば、ただ暗い窓ガラスに、かっちりとスーツを着込んだ一人の男がにやりと不敵な笑みを浮かべて映っていた。

「っ、あんた……!」
「お誘いを、どうも」

こいつ―――――……!

ゆるゆると腰を這う左手に、覚えがある。
人を食ったような笑みを浮かべるその目が放つ、視線にも。
間違いなく、このところずっと感じていた視線の持ち主だ。
目を見開いてまじまじと凝視するエースをよそに、男の手が胸元をまさぐった。
はっとして、エースがその手を掴む。

「っ、この痴漢野郎…!いますぐブタ箱ぶち込んでやる……っ!?」
「威勢がいいのは結構だが、自分の状況くらいは確認しろよい」

ぷつりとシャツのボタンを外す指を押さえ込むその傍らで、腰を這っていたはずの男の手が脚の間へと回っていた。
やけに素早い動きでベルトのバックルを外され、前を寛げた左手がそのまま布地の上からエースの形をなぞる。

「警官相手に、いい度胸じゃねェか…!その手抜けよっ、ワッパかけてやっ……」
「自分からこんなとこに立っといて、馬鹿言ってんじゃねェよい」
「っ、だか、ら……おれは警官だって、言って……ッァ」
「最近の警官はずいぶん無防備だねい」
「うる、さ……っぁ、やだ、そこ……っ」

やわやわと揉みしだくように動く手が、敏感な場所をくすぐる。
ひくりと腰が疼いて漏れそうになる声を、咄嗟に引き上げた己の手で抑えた。
男の右手を拘束していたはずの手でそうしたことで、自由になった男がエースの胸ポケットから警察手帳を抜いてしまう。

「ちょ……っ」
「ポートガス・D・エース警部補、ね。へェ……キャリア組かい。人ってのは見かけによらねェない」
「返せ、よっ、変態っ」
「その変態に触られて気持ちよくなっちまってんのはどこのどいつだろねい」
「ぁ、ぁ、やめ……っ」

兆したペニスを擦られながら耳元で揶揄されて、じゅん、と先端から熱い液が滲む。
アンダーに卑猥な染みをつくったのをその目に捉えたのか、男の舌がぴちゃりとエースの耳を這った。

「っん……!」

上がりそうになる声を殺そうと、唇を噛む。
ちらりと視線を走らせるけれど、周りの乗客が気付いた様子はない。
一番近いサラリーマンはすっかり船を漕いでしまっているし、その後ろに立っている青年もウォークマンに聴き入りながら熱心に携帯をいじっている。
先ほど目に入った子供など、背の高さからして男に抱き込まれてしまった自分は視界に入らないに違いない。
自ら餌になったとはいえ、なかなか絶望的な状況だ。
悔やんでみても、もう遅かった。

唇を噛んで俯いたエースを完全に獲物と定めたのか、大胆な男の手がアンダーの中へと滑り込んだ。
同時に、うなじのあたりを舌が這う。
ペニスの先端の弱い粘膜を親指に擦られ、きつめに作られた指の輪に根元から扱かれると、否が応にも腰が揺らめいてしまう。
短く漏れる吐息を必死で噛み殺しながら、エースはまるで縋るように男のスーツの端を握り込んだ。
半ば無意識の行動だったのだが、男はそれに気を良くしたらしい。
くすりと小さく笑うと、ちゅ、と首筋に口付けて、すぐ耳元に吹き込まれた。

「エース。素直におねだりしてみろよい」
「んっ……」
「うん?」
「……っ、も、っと……っ」
「…………いい子だ」
「っ、ぁ、んっ、ん……!」

ぎゅ、とペニスを握り込まれるのと同時に、男の腰が押しつけられた。
興奮した男のものが、尻に当たる。
何故だかそれを気持ち悪いと思う余裕さえなく、尻で擦られるようにしながらペニスを扱かれると、たまらない悦楽が背を走った。
濡れた粘着質な音が、電車の音にかき消されるようなわずかな音が、やけに耳に響く気がする。
どくどくと早鐘を打つ鼓動が、もう完全にエースの支配下にない。
ひくりと喘ぐ喉を撫で上げた男の指が、エースの唇を割った。

「っん……!?」
「噛んでいい。声、抑えてろよい」
「ん、っふ、んぅッ……」

口蓋をくすぐり、舌を捕まえて、男の指が好き勝手口内を弄ぶ。
左手は執拗に裏筋をなぞり、張り出した部分を捏ねるように指先が刺激して、痛いくらいの快感に目が霞んだ。
ぬるぬるとぬめる先走りを塗り込めるように動く指に、弱いところをとらえられて脚ががくがくと痙攣する。

「ッ―――――……!」

首筋に噛みつかれ、舌を這わされて、尿道のあたりを爪の先に抉られた瞬間、男の指に歯を立ててエースは声もなく達していた。





完全にくたりと男に背を預けて、吐精の余韻にとろりと重い瞼を必死で持ち上げる。
口の中に、わずかに鉄臭い味がする。
そういえば噛んでしまったのだと思い出して、いまだ口の中にある男の指に舌を絡めた。
なんで、そうしたのだろう。

ゆっくりと指を引き抜かれ、エースの唾液に濡れたそれが、シャツの下、いたずらに乳首をくるりと撫でた。
緩い刺激に、エースの肩がぴくりと跳ねる。

「さて……エース警部補」

まるで芝居がかったような口調で、男が言った。
エースの身体を抱きとめる、その腕に込められる力が増す。


「3つ先の駅で下りてベッドの上と、次の駅のトイレ。……初めてならおまえ、どっちがいいんだい?」


耳元。
甘いバリトン。
窓に映る、馬鹿みたいに蕩けた自分の顔と、意地の悪そうな男の顔。
その目に抵抗する術を、知らない。

選べ、とそう命令されて、降りる予定のない3つ先の駅の名前を口にしたおれはたぶん、もう。


fin.


エースが22歳になってしまった(キャリア組の警部補年齢)。 << Back