※やまもおちもいみもありません くねる身体は不健康に細く、誘う指先は妙に白い。 浮いた腰骨は思わず噛みつきたくなるほどだ。 臍に連なったピアスは稀に見るピジョン・ブラッドである。 見せつけるためでない場所へそんな石を持ってくるのがこの男らしく、かつ魅せ方を心得た選び方と言えた。 目の下に馴染んだ隈も乾いた唇も、情欲を殺ぐどころか煽る一方なのだから解らない。 その唇がキスをせがむのに応えながら、キッドは膝の上に抱き上げた身体に手を伸ばす。 パーカーの下、細くすんなりとした身体の線を確かめるように撫で上げて、ふと指先の違和感に気づくキッドだ。 唇を離すと腹の中ほどでわだかまっていたパーカーをたくしあげ、目に飛び込んできたそれを凝視するのに、ローの濡れた唇がゆるりと弧を描く。 薄い色をしていたはずの左の乳首には、いつのまにか小さなピアスが鎮座していた。 キッドがローを初めて抱いたのは五日前の夜。 最後に抱いたのは二日前の昼。 まだ首筋の噛み痕すら消えないというのに、無理な仕打ちに赤らんだそこは一等生々しかった。 「んだよ、いつ空けた?」 「フフ……あァ、昨日、な」 「昨日だァ?だからかこの色は。ハッ、誰に拝ませてやったんだ」 「自分で、だ」 「ぬかせ」 「ッア……!」 小さなリングに噛みついて引っ張ると、喉を引き攣らせてローが喘ぐ。 少し痛いくらいが好きなのだと言っていたから、悦に入ってのことだろう。 脚の先までひくつかせて、随分な好きモノだ。 「勝手に達くんじゃねェぞてめェ」 腹に当たるローのペニスの根元を絞め、顎の下をぞろりと舐める。 すでに零れ落ちていた粘液でキッドの指が濡れ、張り詰めて脈打つ熱はやけに卑猥だった。 舌先でごくりと喉仏が上下するのを感じて、同じ男なんだよなぁ、と的外れなことを思う。 馬鹿げた話だ。 人間を辞めてどれほどになるか正確には覚えていないが、それでも男に手を出すことはなかった。 人に禁忌を破らせやがって、と少しばかり恨めしい。 短い嘆息の後で下肢だけを暴いたキッドは、焦らすようにぬるぬると、自身の昂りをローの尻の間に擦りつけた。 「んっ、てめ……、なに、して」 「はは。このままオイルでぐっちゃぐちゃにしたら、擦ってても達けそうな気がしねェか」 「ざけっ……んな、ゃめ」 「ねだれよ」 欲しいんだろ。 ローが望むことを知っていて与えない。 場にそぐわない舌打ちも聞こえないふりだ。 女と違って肉の薄い、小振りの尻ではキッドの手は余ってしまう。 けれど低いはずの体温が上がって汗ばんだ肌はしっとりと馴染んで、キッドを愉しませるに十分だった。 ぐ、と狭間を割り開いてなおも擦りつけると、眉間に皺を寄せたローがキッドの唇に噛みついた。 「……んだよ」 「っの、変態、野郎。人の身体でオナッてんじゃねェ」 「は。突っ込んでほしけりゃそう言えよ」 「るせェ、このケダモノ」 馬鹿にするように舌を出して憎まれ口ひとつ、再びキッドの唇に噛みつくと、ローの指先は悪戯を繰り返すキッドのペニスを捉えた。 くるくると先端をくすぐるように円を描くと、昂ったらしいキッドの舌がローの歯列を割った。 無遠慮に侵入してきた熱いそれを甘噛んで己の口内に招き入れながら、キッドの先走りで濡れた指先を今度は後孔へと移す。 いい加減焦れていたのか、馴らす動きはおざなりだった。 ぬめりが足りないのをご丁寧に用意されたオイルで補うと、ほころび始めたばかりのそこへ育ちきったキッドのペニスを宛がい、ローは性急に腰を落とした。 ぎくりとしたキッドがローの舌を噛んで制止を促すも、今度はローが聞く耳持たずだ。 熱く狭い内壁に食まれ、キッドが薄っすらと赤い瞳を覗かせる。 近過ぎてブレるローの表情は、それでも頬が上気しているのが分かって劣情を煽られた。 一番太く張った部分まで呑み込んだところで、苦しくなったらしいローが唇を離す。 ひとつ大きく吸いこんで、キッドが皮肉気にローの顎をなぞった。 「っはァ……ば……っか、キツイんだよ」 「言った、だろ……っ、痛ェ、くらいが、いいんだ……ッて……ァ、」 「てめェと一緒にすんじゃねェ」 「ぅあ……っ、ぁ」 整わない呼吸もそのままに、浮いた腰を掴んで引き寄せ、いささか手荒に揺さぶって奥を犯す。 ぴんと張った脚の指先までが細かに震え、荒い呼吸に混じる喘ぎは満足そうな甘さだった。 放っておけば、慣れたころに勝手に腰を振りだす男だ。 女相手なら満更でもないことが、この男を相手にするとどうも勝手が違う。 己が主導権を握り、思うさま啼かせてやらねば気が済まないのだ。 まったく、男の身体を弄んで何が楽しいんだと自分に問いたい。 おれは変態か。 浮かんだ自嘲は、きゅう、と咥え込まれるのにかき消される。 よもや考えを読まれたとは思いたくもないが、相手がこの男だけに考えられないことではない。 目の前には呼吸に上下する薄い胸。 ピアスの空いた左は赤く、右はまだ知った色。 やられてばかりではキッドの名が泣く。 仕掛ける悪戯は決まっていた。 「おい。こっちはおれが空けてやるから、とっとけよ」 告げて、つんと尖った右の乳首に噛みつけば、肩に置かれたローの手が震えた。 表情は窺えないが、熱い内壁がひくひくと悦んでいる。 その様子に、知らずキッドの口角が上がった。 噛みついたそこを侵していくのは、自分と同じ赤い色。 「ユースタ、ス屋ァ……」 あつい。 そう幸せそうに吐息を漏らすこいつも、例に漏れず変態だ。 fin.
(ったく、おれを巻き込むんじゃねェよ) (好き勝手善がらせといて冷てェなァ) (勝手に善がってろバーカ) (はは、ユースタス屋のテク無し野郎) (ッてめ、泣かす…!) title:D'espairsRay 一人で楽しかったですが物足りませんでしたすみません。 「臍ピ」 「最近乳ピを空けたロー」 「噛んで引っ張るキッド」 「ローの尻はキッドの手が余っちゃう小ささ」 「変態」 というキーワードを全部突っ込んでみました。無理がありました。れっつりべーんじ。 「E9cfcc」がテーマ色でした。 << Back